0-9 天性の革命家
時は、パインドゥア村がまだ平穏だった時間まで遡る。
その同時刻、惑わしの
「……でね、また会ったらお礼してくれるんだって! すっごく律儀だなぁって思ったんだよ!」
「へぇ……そうなのかい」
姉妹は楽しく会話を楽しみながら、やがて森を抜けたところで、ヒトリは不意に足を止めた。
キズナも数歩先で足を止め振り向き、「どうしたの? お姉ちゃん」と尋ねた。
ヒトリは鼻をスンと鳴らし、道の先を睨みつける。
「いやぁな臭いがするねぇ……」
キズナも辺りを嗅いでみるが、首を傾げるだけだった。
「この先は――パインドゥア村か。ちょっと寄り道してから帰ろうかねぇ……」
キズナは頷き、姉妹はパインドゥア村へと歩き出した。
◇
パインドゥア村が見えてきた。
姉妹が着いたころには、パインドゥア村は山賊たちに襲われている
「ひ……ひどい、早く助けないと……!」
そう言って、ヒトリを見上げるキズナ。
ヒトリは奥歯を噛み締め、槍を召喚しようと手を動かしかけ――ある人物が目に入り、動きを止める。
山賊長と対峙するひとりの少年――ツナグの姿だ。
キズナも気づいたようで、「あの子……!」と息を飲んでいた。
加勢に入ろうとするキズナを、ヒトリは制止する。
「お姉ちゃん、どうして……!」
疑問をぶつけるキズナに、「……ちょっとだけ待つんだ。彼の姿を見てなさい」と、ヒトリは答えた。
不満げな様子のキズナだが、姉の言うことをとりあえず受け入れたようで、胸の前で手を組み、祈るようにツナグを見つめる。
「やめてくれ。こんなの、間違ってる」
ツナグは言い、立ち上がった。ヒトリは期待の込もる眼差しで、ツナグを見つめつづけている。
「……頼む。こんなことしたって何になるんだ。お願いだから、手を引いて帰ってくれ」
ツナグの必死の願いも聞き入れようとせず、山賊長は短剣を抜いた。いよいよツナグが危ういと、ヒトリは助けに入ろうとしたときだった。
「――やめろっつってんだよ!!」
響き渡る、ツナグの心の底からの言葉。
山賊長は動きを止め、離れて眺めていたヒトリも、歩みを止めざるを得なかった。
キズナも目を見開いて、肩を小さく震わせた。
「……ただの少年が、たった一声で場を制圧するなんて、ねぇ……」
例えそれが一瞬のことだとしても、ヒトリは自身の歩みを止めたツナグを心の内で賞賛した。
そうこうしているうちに、ツナグは山賊長の顔へと拳を振りかざしていた。
山賊長は倒れ、意識を失う。
自身の力に戸惑いの色を浮かべるツナグを眺めながら、ヒトリは一人、口角を上げた。
「……お姉ちゃん?」
キズナはそんな姉の顔を覗き込む。ヒトリは内から溢れ出る喜びを感じながら、キズナへと語る。
「キズナ、ようやく出会えたよ――人々の心を突き動かす、カリスマ性と強さを秘めた、世界を変える力を持つ存在に」
「世界を、変える……?」
「ああ。この暗雲の時代を終わらせることができるかも、ねぇ」
ヒトリは、彼をこう称する。
「彼は――『天性の革命家』だ」
次の更新予定
転生の革命家 みおゆ @mioyu_k
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生の革命家の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます