最終話:たとえ世界中を敵に回しても。

俺のマンションは高級とは言えないがセキュリティーは整ってる。

だけどそんなセキュリティーを物ともせずベランダから忍び寄ってきた

やつらがいた。


誰かがベランダに上がって来たことにいち早く気づいたのはエウリだった。

エウリは探知能力にも長けてる。

至れりつくせりの魔女なのだ。


「レノ・・・ベランダに変な人が来てるよ」


「なんだって?・・・めんどくせえ・・いったいどこのどいつだ?」

「なんのために?」


すると研究ラボの責任者パルヴァローテ様から俺に連絡が入った。


《レノ、気をつけて「ガレットデロワ」って組織があんたらを狙ってる・・・

エウリが「アスモデウス」を一人で殲滅したと知った「ガレットデロワ」が

自分たちの組織もエウリに潰されると脅威を感じてるみたい・・・》

《エウリが発動する前に先にエウリを倒してしまおうと企んでるみたいなの》

《だからガレットデロワの精鋭部隊がそっちに向かってるって、バンから情報が

入ったから充分気をつけて・・・》


「もう来てるみたいです・・・エウリがいち早く察知してます」


《さすがね・・・》

《でも今のエウリはチップで制御されてるでしょ、ラボに来ないと外せないわよ》


「そのことなんですけど・・・チップとっくに壊れてて・・・」

「だから今のエウリは制御が効いてないから解放された状態なんです・・・」


《なんですって・・・じゃ〜なんで、あんた無事なのよ》


「まあ、それはいろいろありまして・・・エウリは自分で自分の能力を最小

制限してるんです」


《そんなことある?》


「魔法に目覚めたんじゃなくて、今は愛に目覚めてるみたいです」


《なに訳の分かんないこと言ってるのよ》


「とにかく切ります・・・時間ないので」


《ちょっと〜充分気をつけなさいよ》


「生きてたらラボに顔出します」


って連絡を切ったと同時にガレットデロワの連中なんだろう・・・ベランダの

サッシドアのガラスをぶち破って武装集団がなだれ込んできた。


「いらっしゃい・・・・」


エウリは特別脅威を感じてないのか椅子に座って膝を組んでいた。


「ここから先は通さない・・・」


次々入ってきた奴らは全部で10人いた。


「こいつか?は「エウリュアレー・メデューシ」って女は?」


ひとりの奴がデジタルウォッチでエウリの顔を確かめたのか、そうだと

返事をした。


「そんなところで呑気に椅子に座って殺してくれって言ってるようなもんだな」


「レノは伏せてて・・・ソファの裏側にでも身を隠してて、すぐ済むから」


「言われるまでもなく隠れてるよ」


「じっとしててね・・・レノにもしものことがあったら私泣いちゃうから」


「あ〜泣いたあとが怖いよな・・・想像つくけど・・・」


「なにごちゃごちゃ言ってる・・・男の方は後だ、お前から死ね女」

「撃て!!」


奴らのひとりがそう言うとエウリに向かって一斉に機関銃を連射した。


その流れ弾が俺が隠れてるソファのほうまで飛んできたせいでソファはボロボロ・・・俺は腕と足を負傷した。

このくらいじゃまだ死ねない・・・なんてったってエウリとまだエッチしてないし。


激しい音とともにエウリも蜂の巣になるはずだったが機関銃の弾より

エウリの動きのほうが早かった。


もしまじでエウリがキレたら精鋭部隊もろともこのマンションごと破壊してた

だろうからこの一帯は焦土と化していただろう。

でも、そんなことしたら俺も巻き添いを食うって彼女は知ってるから、そんな

バカなとはしない。

ただ誰よりも早く動いて武装集団をひとりひとり、ひょいって触って次々消して

いった。


エウリが指で触ると、奴らはひとりひとりふっとどこかへ消えていくんだ。

だから大袈裟なことにもならず精鋭部隊は跡形もなくひとりもいなくなった。


俺は唖然と気をとられていた。


「エウリ・・・なにした?」


「あいつら悪人だから地獄送りにしてやったの」

「悪人は地獄行きって昔から決まってるの・・・神の審判とか受けずにね」

「それも私の魔法のひとつだよ・・・」


「それよりレノ打たれたんじゃない?」


「腕と足をちょっとな・・・」


「大丈夫?・・・死んじゃ嫌だよ」


「このくらいじゃ死にゃしないよ」

「俺はおいそれとは死ねないからな・・・もし俺になにあったら誰かさんは

許さないだろ?・・・マジギレして世界を巻き込んで人類に終末がやって来たら

大変だからな・・・」

「おまえのために生きることが俺の責任・・・彼氏としてのな」


「うん・・・これからも今と同じようなトラブルがあるかもしれないけど、

レノは私が守るから・・・絶対死なせないからね、たとえ世界が滅んでも・・・」


これをきっかけにエウリと俺はまた組織から狙われる羽目になるかもしれない。

もしかしたら政府を敵に回すことだって・・・。

たとえそうなっても、たとえ世界中を敵に回しても俺はエウリを守るし、彼女と

ともに戦っていく。

でもパルヴァローテ様は敵には回したくないよな。

もしエウリとパルヴァローテ様が戦ったら世界は1日も持たないだろうからな。


俺たちに、つかの間の平和がやって来る、エウリはますます俺に依存して

行った・・・魔女だなって意識しなかったら普通のキャピキャピギャルだよな。


もうアマルダの短剣も封印も彼女には必要ないんじゃないかって気がする。

ベランダのサッシドアのガラス高くつきそう。

それとエウリがお気に入りだったソファも・・・。


END.





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最悪で最高のソルシエール。*魔女は常にわがままで自分勝手* 猫野 尻尾 @amanotenshi

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