第8話 : 私達の戦後処理







 私は夕立。艦装少女フリートレスです。



 私たちが生まれる原因となったのは、2304年の昔に遡ります。



 当時、マリアナ諸島付近の会場に突然現れた人類の敵、


 Dimension

 Entered

 Enemy,from

 Parallel world


 結構メチャクチャな英語の羅列、「次元を突破してきた別世界の敵」という名前の略称、


 D.E.E.P.


 あのクソカス共が原因でした。



 D.E.E.P.は、接触した生物を取り込んで同族化し、地球の生態系を破壊して、かなりの数の生物の絶滅に関与していました。


 人間はもちろん、真っ先に標的になりましたとも。


 海洋に面した国家の被害は大きく、D.E.E.P.は接触同化する特性を持つ特殊な細胞の集合体ゆえに、通常の質量兵器の効果が薄いために人類はすぐ窮地に立たされました。



 ところが、状況が変わったのは、D.E.E.P.侵攻が太平洋のガダルカナル島付近にまで来た時でした。



 D.E.E.P.の生み出した同化生物達の、空白地帯がその周辺海域に生み出されていたのを発見したんです。


 何故、そこをD.E.E.P.が避けるのか?

 その答えは、ソロモン諸島ガダルカナル島近くの海域、


 別名『鉄底海峡アイアンボトムサウンド』と呼ばれる水底にありました。


 ある種の軟体動物頭足網、つまりタコの一部の体内の常在菌に、D.E.E.P.細胞を溶解させ、いくつかの不純物と水に分解する能力がある事が判明したんです。



 人類は、このタコと共生している菌を利用した、青い色の対D.E.E.P.用の化学兵器を作り、対抗する術を編み出しました。



 この菌は温度に対しては異常な耐性を持ちながらも、培養にはどうしても生きた生物が体内で培養する必要がある困ったちゃんでした。


 同時に強力な爆発物になりうる特殊な血液を持った生物でなければいけませんでした。



 その条件を満たして、直接D.E.E.P.へこれらを打ち込む為に、


 人は、人工的にそれが可能な生物を作り出しました。


 ある種の化学物質と反応して爆発する血液を持つこの生き物は、人間を超える身体能力とこの血液を利用した機械を動かすだけの動力源としても機能し、

 通常はありえない火力を持つ、化け物を倒すための化け物となりました。





「それが我々、フリートレス。

 未知の敵を殺す青い血液と、ちょっと訳アリで地球の歴史上でも有名な第2次世界大戦頃の戦闘用艦艇、

 その名前を受け継いだ、人類を守る為の怪物。


 まぁ、結構私たちは危ない生き物なんですよ」





 そして、そんな危ない生き物が、どうも半分は私達のせいで流れ着いた先の異世界の人たちに、


 こうやってフリートレスの簡単な説明をしていたのです。




「‪……‬‪……‬通りで、俺ら悪魔が見ても悪寒がする訳だわな。

 魔力とかじゃない、何か別の寒気がする力を感じるぜ。


 見た目はもう、そんな誘ってるとしか思えない素敵な肌色多めの格好のスタイルも顔も良すぎる美人達なのに、ゲフッ!!!」



「黙ってろサタルキア」



 今、この世界には時空の穴が空いているそうで、

 現地の魔法学校の先生の美女系イケメンエルフさんのエリアテ先生が、旧友でその穴からやってきたんじゃないかなって思う残念可愛い系イケメン性欲魔神のサタルキア氏を殴ってました。



「危ないは分かるけど‪……‬でも夕立、昨日の戦いを見る限りだと、言い方は悪いけど私でもまだなんとか‪……‬勝てるかも知れないぐらいだよ?」



 そういうは、我らが現地提督となられたピンク髪の可愛い女の子。


 でも割と凄腕魔法使いと思っている、フォロン提督です。


 ちなみに提督の評価はマジだと思ってます‪……‬昨日すごかったですもん提督。



「‪えぇ〜?提督ちゃんみたいなちっこい子がなんとかなるレベルぅ〜???

 ねぇねぇ、夕立、ちょっと手加減しすぎじゃない〜??

 人間がフリートレスに喧嘩売っても怪我するか遊ばれるだけだよ〜??」



 なんて舐めたメスガキ態度の、精神年齢と身体の年齢がチグハグな金髪ツーサイドアップヘアーのワシントンさんです。



「‪……‬‪……‬いやワシントンさん?

 言っちゃなんですけど、フォロン提督はすごい魔法使いなのはマジなので。

 火力だけで駆逐艦の雷装全ブッパしたのと同じな上に、多分私よりテクニカルなので、評価は適正ですよ?」



「‪……‬‪……‬マジ?」



 と、ワシントンさん舐め腐った態度と、提督のほっぺまだ両手で挟んでムニムニしながら聞いてきます。



「ワシントンだっけ?

 マジかどうか後で遊んで試してあげようか?」


「どーどー提督落ち着いて」



 意外と、沸点低い方ですねフォロン提督‪……‬

 いやワシントンさーん?提督のほっぺそんなに気に入ったのかな〜??もう離してあげなさい!



「まぁでも、夕立ぐらいなら適正な評価じゃない?」


「まぁそうですけど。ちょっと不服ですけど」


「?」


「ああ、提督これだけは言っておきますけど、


 私多分この14隻のメンツの中じゃ、スペックだとおケツの方ですよ?」




 ‪……‬‪……‬‪……‬



「は?」



「嫌だから、私正直火力でも性能でも、このメンツの中じゃドンケツですって」



 提督の、何言ってんだお前って顔がすごい。



「ありえないわ!!あなたレベルで!?!」


「いやいや冗談でしょ、じゃあ苦戦したし負けた私達何よ!?」



 なんていうのは、昨日色々あって戦ったお姫様ことドーリナ姫さまと青肌悪魔美人のアスモロッテ氏です。

 どうでも良いけど、十分露出度あるアスモロッテ氏に露出度で勝ってる私の格好やっぱ頭おかしい気がしてきました。どうでも良いけど!!



「嫌だって、ガチで単純なゴリ押しバトルで勝てるの、

 多分軽巡洋艦装少女ライトクルーザーフリートレスのダイドーさんぐらいじゃないかな?」


「えっ、私!?!

 私この中で二番目に弱いって思われてます!??」



 顔の良さなら頭の方の、ヴィクトリア軽巡洋艦装少女ライトクルーザーフリートレスのダイドーさん。



「でも実際、対空能力なら上とはいえ、戦い方とか抜きで考えればダイドーさんぐらいでも私苦戦しますよ。


 その上で、そこの大型駆逐艦の皆さんは私より速いし重火力じゃないですか」



 我らが陽元の活発系イケメン女子駆逐艦装少女デストロイフリートレスの島風さん、


 EUFのクソ生意気敬語紫ロングヘアな大型駆逐艦装少女ラージデストロイフリートレスのル・ファンタスクさん。


 後、見た目銀髪ミステリアス美人、中身は陽気な酒飲みのノーシア所属の嚮導駆逐艦リーダーデストロイフリートレス、タシュケントさん。


 以上3隻、私が褒めるなりドヤ顔でこっち見てきます。

 ムカつくけど、マジ殴り合いなら負ける相手です。



「後ビビってるのは提督の引きの強さと言いますか、


 ぶっちゃけ、高雄さんにプリンツ・オイゲンさんにザラさん、


 3隻も『重巡洋艦装少女ヘビークルーザーフリートレスを引き当てるとは。


 全員がフリートレスの中でも大変重宝されてる面々ですもん」



 へぇ、とワシントンさんにプニられながら、提督は視線を我らが重巡洋艦のみなさんに向けていきます。



「よぉ。私がどんなにすごいか分かったカ?おチビ」


「お前だけは強くても頼りたくないよ、チビのデカ乳」



 ドヤ顔で煽るオイゲンさんに、半ギレの提督。

 ダメだ。この二人多分合わない‪……‬



「‪……‬夕立、だったかな?

 私は持ち上げられても困るよ、ロマリアの重巡なんだ」


 ふと、癖っ毛ロングヘアに男装風なオシャレ衣装のロマリアことEUR所属のザラさんが、かけているメガネの位置を片手で直しながらそう言います。



「そんなこと言って、スペックもフリートレスとしての戦績も優秀だとお聞きしてますよ?」


「相変わらず、歴史上のザラと同じく勝ったと言える戦いは無いがね。

 もっとも、料理の腕ならば単独首位を狙わせてもらうがね。


 ああ、戦歴でいうのならば、もっと優秀な重巡洋艦装少女ヘビークルーザーフリートレスというなら、そこにいるじゃ無いか。

 なぁ、高雄‪……‬‪……‬」



 話を振られた高雄さん、その青く長い髪がちょっと机の上にはみ出ていますが、椅子と机の後ろに隠れて縮こまっていました。


「高雄さーん?またですかー?」


「アタシは高雄の名前に似合わない雑魚ですぅ‪……‬‪……‬

 うぅ‪……‬戦歴って言ったって負け戦が多いし、結局本物の高雄と違って沈んでますぅ‪……‬

 ただの高雄って名前の面白い格好の女ですぅ‪……‬

 愛宕ちゃんの方が私より100倍優秀で可愛くて最高の重巡ですぅ‪……‬!」



 無いのは自信だけ。それが高雄さん

 高雄さん、これでも優秀な人なのになー



「‪……‬‪……‬で、この優秀な重巡の皆さんの上をいくのは、

 これはこれで引が良すぎる面々の、隼鷹さん、アークロイヤルさん、グラーフ・ツェッペリンさんの3隻もいる空母艦装少女エアクラフトキャリアフリートレスの皆さん。


 特殊な攻撃方法のおかげもあって、地味にアンチフリートレスとしての能力も高いんです」



 でへへ、とまんざらでも無い顔の癖っ毛黒髪少女‪……‬な年齢も遥か昔となってしまった隼鷹さんに、

 ペコリと一礼するヴィクトリアのメイド長、アークロイヤルさん。


 そして、いつのまにか勝手に拝借したそこらへんの魔道書っぽいものを読んでいる中、チラリとこちらを向く黒髪ストレートな美人さんことグラーフ・ツェッペリンさんです。




「でもまぁ、やっぱ最強は」



 チラリと、提督を‪……‬正確には提督を抱き抱え始めた身体だけはデカい幼女の方を見ます。



「ちょっと!

 その言葉で向ける視線が違うでしょ!?!」



 ふと、そんな抗議の声を上げる金髪ツインテールの目尻のきつい美人が。



「順番がご不満で?

 言っときますけど、あなたの武勇ぐらい聞いておりますんで。


 なんてったって、大和に匹敵する欧州最新鋭戦艦装少女バトルシップフリートレスのリシュリューさんですもん」



 チッ、とリシュリューさんが舌打ちしました。

 態度悪い。



「逆よ逆!!

 大和が!!この私ことリシュリューに匹敵するのよ!!


 アイツがなんなのよ。大西洋まで名前だけ広げて!!


 みんなが大和大和、はいはい大和ね!!すごいわね!!


 まぁ、アイツ言うだけはあるって言うのはアルザスとロレーヌぐらいまで譲ってやって認めてやるわ!!


 けどね!!アイツだけが英雄扱いっていうのが我慢ならないのよ!!!


 私は!?!


 どうせ私が敵の8割引き連れて殲滅して自爆しなかったら、アイツがあの亜空間だかでトドメの一撃放つなんて無理だったに決まってるのよ!!


 私が!!フランクの最強の戦艦装少女バトルシップフリートレスのリシュリューよ!!!


 少なくとも知名度補正のないそこのチビ提督!!

 私が最強なのは覚えておきなさい!!」



 ビシ、と提督を指差してそう宣言するリシュリューさんでした。



「‪……‬‪……‬そういえば、戦艦装少女バトルシップフリートレスって、夕立がヤバいって朝も言ってたヤツだっけか?」


「ええ。

 リシュリューさんの態度は小物っぽいですが、態度以外はマジです。


 後、提督を抱っこしているワシントンさんと、こっちのサウスダコタさんもかなり最新鋭の戦艦装少女バトルシップフリートレスなので、かなり強いですよ?」



「そうだよ?

 ワシントン、強いよ!」


 えっへん、とワシントンの張った胸が提督の後頭部に直撃しました。おいたわしや‪……‬

 あ、提督そのままワシントンさんの胸をアイアンクローだー!ただではやられない!!



「まぁ、長ったらしい最強談義なんて良いけどよォ‪……‬

 夕立が良いてぇのはな、提督。



 アタシらさぁ‪……‬『強すぎた』んだよなァ‪……‬な、夕立ィ?」



 と、珍しく頭のいい発言をするサウスダコタさんです。



「ええ。

 正直、提督が学生身分でありながらも並の駆逐艦装少女デストロイフリートレスを超える戦闘力の凄腕魔法使いであるのはすごいですが。


 例えば考えても見てください。

 エリアテ先生や王様、魔法使いというべきか魔導士というべきか、


 ズバリ聞きますけど、提督レベルの生徒が1000人いたら、凄まじいと思いません?」



 と、今まで聴き手に回ってもらっていた、教育者な魔法使いのお二方に問いかけます。



「‪……‬ふむ。

 私は、若い魔導士の卵達の価値を決めつけるのは好きではないのだが、


 そうだな。

 うむ。もしもフォロン君の様な魔導士が、それもまだ成長途中でその様な数もいたら‪……‬


 私は彼らと共にやりたかったあれやこれやの魔法の研究の選択肢が増えて、ああ困るなー!非常に困る!!」



「そういうことではないと思うが、この魔法バカ王め。


 ‪……‬‪……‬単純な戦闘技能の話で言えば、最悪この国はこの大陸の覇者になれるな。


 それ以上の人材が多数いるなら、いずれは神も殺す勢いとなるだろう」



「でしょ?

 なので、共通の敵が死んだら私達、勝手ながら沈んでおこうって思ったんですよ」




 そう。私たちは強すぎた。

 最強の力を手に入れなければ勝てなかった敵がいて、

 最強の力で勝った後、最強の力を持った人間は何をするのだろう?



「なるほど。

 最強の力を持った人だけが残れば、ろくな事はしないということか」



 エリアテ先生、心読んでらっしゃいます?



「けど、それってよ」



 と、ふとサタルキア氏が何か神妙な顔をしてこちらに語りかけてきます。



「‪お前ら‪……‬お前らは本当に幸せか?そんな自死を選ぶ最後で」



 ‪……‬‪……‬以外な言葉を、投げかけられました。



「意外なこと、言いますね」


「当たり前だろ、俺は魔神だ。そこの悪魔にレギオンも、そろってこの世界に来たのは俺たちの幸せのためだしな」


「‪ふん。自らの幸せか

 そのためだけに、他の世界に空いた時空の穴を勝手に利用するとは厚顔無恥も甚だしいことだ」


「悪いかよ。けどな、俺達はまだ一個だけマシだと思ってるところがある。

 なんせ俺たちは、俺たちの幸せのためにはお前らもハッピーになって貰いたいからな。


 そりゃあよ、エリアテの言う通り、俺ら基本カスだからよ。散々利用しておいて捨てる奴はいるさ。

 けどこっちの世界にやつもそう言うのはいるし、少なくとも俺はそんなことしねぇ。


 俺が泣かせるのは、ベッドの上の女に快楽の限りぶち込んだ時だけって決めてんだ」



「下劣な」



「なんとでも言え。下劣ついでに言えばな、俺はこの世界の奴らといわばセッ◯スしに来てんだ。

 独りよがりのマスカキで、男汁そこらへんに撒き散らしてフゥって言うためじゃねぇ。


 ああそうだよ言うな、クッソ下品さ。


 だが言いたい事はおぼこな嬢ちゃんどもなんていない年頃だしみんなわかんだろ?


 ‪……‬セッ◯スっていうのはな、下品な行為っつっても、相手と相手の同意と愛がいるもんなんだよ。


 どっちか片方が満足する様なのはど三流のおぼこと童貞も良いとこだ。

 お互いに、気持ちよく、最後はおしべとめしべだけじゃなくて、舌を絡ませるだけじゃない。


 心だよ。

 そう、心から絡み合って、溶けてく様な心地よさってやつ。


 そういうのが良いわけだよ。そういうのが」



「‪……‬下劣だ」



 確かに、だいぶお下劣。



「うっせーな!それが俺のポリシーってヤツなの!!


 みんな気持ちよく幸せに!!


 そもそも1000年ぶりに面出したのも、アンタら魔導士の召喚契約先によ?

 俺ら魔界のちょっとマシな奴らとも契約できるようしてくれって頼むためだからな!」



 なんだと、とエリアテ先生がピクリと眉を顰めます。



「私の生徒に寿命を差し出せと?」


「それは‪……!!

 ‪……‬まぁ、要相談だけど、まぁその‪……‬


 考えるから!!そこら辺も色々!!

 なぁエリアテ、俺が嫌いなのは分かるけど、俺ら魔界の奴ら全員を嫌わないでくれよ!


 俺らだって‪……‬‪……‬俺らはさ、ただ向こうのクソみたいな世界だけでただ暇つぶしして生きてる様なのが嫌なだけなんだよ‪……‬


 太陽があって、暑すぎたり寒すぎたりしない時期もあって‪……‬でも永遠にいられるわけじゃないここに少しだけ滞在したいだけなんだよ‪……‬」



 しおしおと、見た目だけは良い顔を少ししょぼくれ見せながらそう言うサタルキアさん。



「‪……‬聞く聞かないはおいておいて、要望だけは覚えておく。

 それで?彼女らに何が言いたいんだ?」



「‪……‬‪……‬失礼だったら先謝る。悪い。


 けど、お前らそんな悲しい存在のまま死んで良かったのか?」



 ‪……‬‪……‬‪……‬



「答えてくれよ。

 俺さ、正直お前らの生まれた理由を今聞いてから、戦ってた理由まで簡単に聞いたくらいで、すでに泣きそうだぜ。


 つまり、お前らは勝てるか分からない相手と戦うためだけに生み出された命で、

 その戦いが終わったら、最悪人同士の戦争とかのために利用されそうだった。

 だから自ら死を選んだ。


 でもここがおかしいんだよ。お前らなんでそんな簡単に死ねた?


 多少残ってるっていう口ぶりだったけどな、お前さそれってつまり‪……‬



 お前ら作った人間が、お前らを要らねぇと判断したからすんなり大半が死ねたんじゃないか?」





 ‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬





「‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬ふぅー‪……‬


 ‪……‬‪……‬いやー、参りました。


 恐れ入谷の鬼子母神ですね」




 あ、分かんない言葉言っちゃった。

 まぁ要するに、いや全くその通りでございますははは、何笑ってんだ殺すぞ、って意味です。



 ───私達に願いを聞き入れたのは、フリートレス反対派だったのは事実です。



 ‪……‬言いたくはないけど、核の手配から何までも‪……‬





「‪……‬‪……‬夕立さん以下、勇敢で人類の未来を考え自沈した皆さんの参加した、あの第2次クロスロード作戦後‪……‬


 私こと隼鷹を含めた一部フリートレスが生き残ったのも‪……‬


 フリートレス製造技術の管理、そして保管と‪……‬監視のためです」



 そして、これまでの話を踏まえて隼鷹さんが、私の自沈後70年の事を語り出しました。



「そして、70年間それは確実に果たす事は出来ました。

 いくつかの紛争と冷戦‪……‬その間人類同士の戦いでは、フリートレスの力を使わずに済みました。


 私達の力は、その強さ以前の問題で使ってはいけないものですから。


 だって‪……‬‪……‬そもそもが『生物兵器』。

 この魔法の世界にそう言う概念があるかは分かりませんが、私達は致死性の病気を故意にばら撒く様な攻撃と、本質は同じ物なんです。


 それも、元々から動物の遺伝子‪……‬生物の設計図をいじり回して生み出した物ですから‪……‬


 私なんて、元人間です。

 私のお父さんが作り出した、人をフリートレスに変えてしまう技術がもしも漏れたら‪……‬私ともう一人の実例以外が存在してしまったら‪……‬




 ‪……‬そんな不安を抱えて、なんとか世界は一つにまとまって、


 地球平和連合発足より10年、もう二度とフリートレスは使われない様にする条文と世界憲法の制定をする事が出来ました。


 そして、いよいよフリートレス技術の永久破棄を出来たと思ったのに‪……‬」




「‪……‬‪……‬じゃあ、私達いわば元の世界じゃもう憲法違反の存在って事ですか」



 やれやれ、そりゃあちょっとキツイですねぇ。



「‪……‬酷い人間じゃないそれ?

 誰がそんな‪……‬憲法なんてものにまで書くだなんて、その連合の長はだいぶ心がないよ」



「ははは‪……‬なんかごめんなさい」



 提督の言葉に、なぜか謝る隼鷹さん。



「隼鷹さんが謝る事じゃないんじゃ?」



「‪……‬‪……‬あはは、いや実はですねぇ‪……‬その‪……‬


 言ってなかったですけど、私なんですよ」



 ?



「地球平和連合、初代総監は私なんです」




『えぇ!?!?』




 隼鷹さんが!?

 いやてか出世したなぁ!!



「と言っても、私自身ただ担ぎ上げられただけのお飾り総監でしたからねぇ‪……‬えへへ。

 ただ、その権限でフリートレス技術の全破棄を進めたのは私ですけど」



「なんでそんな自殺じみた事してんだよ。

 ちゅーか、一人で決めたのか?」



「生き残り皆の相違ですよ、魔神さん。

 ‪……‬せっかく世界を救ったのに、その私達の力が世界を見出したらやるせないですもん」



「いや、だからってよ、」




「────納得するしかないじゃん。

 それ決めた時私死んでたもん」




 ふと、発言したのは、不貞腐れた顔で提督に抱きついているワシントンさんでした。



「ワシントン‪……‬」


「‪……‬‪……‬ダコタと夕立は知ってるでしょ?

 私戦うの嫌いだもん。

 毎日遊んでいたかったもん。


 でも‪……‬私が嫌な事我慢しないと、みんなみんな死んじゃうもん。


 だから我慢して戦って、でも‪……‬でも最後は色々やりたかったのに、私沈んじゃった。


 食べたいお菓子があったもん。

 遊びたいゲームも、行きたい場所も、したいこともいっぱいあったもん。


 でも‪……‬‪……‬でもそんなの許されないのも知ってるもん。


 ‪……‬‪……‬私まだ生まれて8年ぐらいだもん。


 なんで私は『ワシントン』なの?どうして私は戦艦装少女バトルシップフリートレスとして生まれたの?


 私‪……‬‪……‬そうなりたくなかったもん‪……‬


 でも、私はワシントンだったもん。


 私が、ちょっと我慢して嫌なことしないと、

 私が好きな物が簡単になくなっちゃうんだもん‪……‬


 沈んだのだって‪……‬沈んだのだって、いっぱい嫌だったけど、仕方ないって言うしかない状態だったもん‪……‬



 だったら納得するしかないもん‪……‬‪……‬」



「‪……‬‪……‬悪いな、あの時はなワシントン‪……‬アタシの」


「謝るなら後でダコタのパンケーキ作って。

 フワフワのやついっぱい。シロップもホイップもいっぱい。じゃないと許さないもん」




 ───最後の戦いの時、同じ戦場にいたサウスダコタさんとワシントンさん。


 お互い、短いけど長い仲なのは‪……‬まぁ同じ太平洋の混成部隊にいたのでよく知ってます。




「‪……‬‪……‬なんか、悪い。軽率だった」




「いえ。

 ‪……‬‪……‬長くなりましたが、身の上を語った上で一つ。

 本題を遅くなって申し訳ないですが、



 私達には時空に空いた穴を治す手段があるんです」




 え、とほぼ全員が驚きの顔を見せます。




「今の身の上話で、私はフリートレスとそれに関わる技術をマリアナ海溝へ沈めた際に時空の穴を見つけ侵入したと話しましたよね?


 考えても見てください。その後を考えるとあまりにも軽率ではないでしょうか?


 まぁ、実際軽率だったとは思いますが」



「でも理屈はわかんだ。

 別の時空に捨てて戻って来れるかっていうのはな」



「‪……‬‪……‬実は、時空に穴をあけたり、閉めたりと言う経験はこちらにはありました。


 と言うより‪……‬‪……‬夕立さん、あなた経験ありますよね?」






 ‪……‬‪……‬‪……‬






「あっ!!」




 ありました。

 そうだ、一回私は、閉じかけとは言え時空の裂け目を無理やりこじ開けてる!!!




「そっか、夕立の『暴力認証ランペイジ・オーソライズ』!!」



「あけられるなら閉められますねぇ!!


 ‪……‬でもあくまで手が届く範囲といいますか、私閉めるのはちょい苦手なんですけど」



「そこは安心してください。


 私達を海底へ運んだ潜水艦は、『イベントホライズン』ですから」




 おぉ、とフリートレス一同、懐かしい名前に思わず驚きの声が漏れちゃいました。



 まさか、70年経っててもまだ動いてたんですか!



「いべ‪……‬なに?」



「『事象の地平線イベントホライズン』?

 奇妙な名前だな」



「イベントホライズンは、私達フリートレスの会場の拠点ともなる大型潜水フリートレス母艦の名前です。


 スターゲイト級3番艦「イベントホライズン」

 ステイツと陽元の共同開発艦で、名前の由来は宇宙の果てにいく映画の名前より付けられました。

 同型艦スターゲイト、ナビゲイターに続いて建造されておりまして進水は最終決戦直前となった艦ですが居住性の問題を抱えた前艦までとちがって」



「隼鷹ォ!!

 オタクになってる!!!艦船オタクになってるぅ!!!」



「隼鷹って軍艦の話とか私達の話になるとすぐ早口になるよね。ナードちゃーん」



 70年経っても変わってないところを見せつけた隼鷹さんにダコタさんのツッコミとワシントンさんの呆れ顔が炸裂しました‪……‬懐かしい気持ちぃ。




「‪……‬所で、気になっていたのだが、

 結局、我々の世界の次元の穴を開けたのは、隼鷹くん、君なのかい?」



 おっと、そう言えばそこの説明がまだだった。



「部分的にはそうかもしれませんが‪……‬いえ、言い方が酷いですね。


 あの時、時空の裂け目に入ったイベントホライズンは、操舵が不能となりました。


 水の中を進む船なので、水がないと進めないんです。


 なので言い訳ではありませんが、私と私と共にイベントホライズンと沈むことを選んだ搭乗したフリートレスの仲間が直接の原因ではないんです」




 なるほど、まぁこれは真偽はともかく納得できる説明です。




「ただ‪……‬犯人はそこにいます」



 しかし隼鷹さんは突然とんでもない事を言いました。


 そう、隼鷹さんが手で丁寧に差し示した先には、




「‪……‬‪……‬あ?なんです?」



 と、片眉をあげて睨むル・ファンタスクさんと、



「‪……‬あっ!!!」



 何かに気づいた顔の、島風さ‪……‬‪……‬‪……‬




「あ、そっか。

 島風ちゃんとル・ファンタスクさんだからだ‪……‬!」



 ついでに、近くの高雄さん何か分かったみたいです。



「は?いきなり何を名探偵エルロック・ショルメの真似事でもしているので?

 なんですか?自白でもすれば良いんですか?

 何自白しろってんですよ、私達、気がついたらこの世界に、」



「─────5次元空間を、全力で走って、


 この世界に来ちゃったんだろ?」



 何言ってんだみたいな態度のル・ファンタスクさんに対して、合点が言ったような顔で、かつすっごい顔色の悪い島風さん。




「そうですよ!!あなたもそうでしょ!?!

 あの四方八方見えないし、かろうじて隣にあなたがいた気がしたぐらいの場所走ってて!!」



「‪途中、なんか抵抗があったと言うかさ‪……‬

 ぶつかった記憶、ない?」



 へ、とファンタスクさんが変な顔をする。



「なんですかそれ?」



「光が見える前に、ぶつかっただろ?」



「‪……‬‪……‬‪……‬は?」



 その言葉に対して、ル・ファンタスクさんは初めて表情が変わりました。



「どこで?」


「いやだから、なんか一瞬光が見えたと、」


「そんなもの感じなかった!!!突然光と、お前の声だけ!!!


 じゃあ、じゃあ、つまるところそういうことですか?そういうことですかって聞いてんですよ!!」



「意味わかんないキレかたすんなよ!!!」



「島風ェッ!!!お前、お前私より速く走ったって事を聞いてんだこのクソ駆逐艦ッ!!!!」



 あ、と小さく漏れる、そう言えばとでも言いたげな島風さんの顔。


 ───なんと、その顔を見たル・ファンタスクさんが一瞬、まるでこの世に絶望でもしたみたいな顔を見せて‪……‬直後に悔しそうに泣き始めました。



「‪……‬‪……‬‪……‬ふざけないでくださいよ‪……‬‪……‬じゃあ‪……‬私のが遅いって事じゃないですか‪……‬‪……‬」



 どさり‪、と地面にへたり込んで、ル・ファンタスクさんが泣き始めました。



「うぅ‪……‬ぐす‪……‬ふざけんな‪……‬畜生‪……‬私が、負けたっていうんですか‪……‬私が‪……‬!!」



「‪……‬‪……‬ありがとうございます、EUF艦隊のエルロック・ショルメさん。


 じゃあ、陽元の明智小五郎は、言い過ぎですかね?

 犯人と時空の穴が空いた原因の推理を言いますね」



 隼鷹さん‪……‬これって、もしかして。



「まず、第1の犯人はこの世界で最初に時空に穴を開ける魔法を使った人となります。


 ですが、おそらくですがその魔法自体は、極めて小さな穴を開けるにすぎなかったはずです。



 第2の犯人。それは恐らく私が乗っていた潜水フリートレス母艦『イベントホライズン』。


 原理やその他は置いておいて、恐らくその質量自体が時空の穴へ叩き込まれた事が穴を広げてしまった原因です。



 そして、


 イベントホライズンが次元の穴へなぜ叩き込まれたのか?



 それは、超高速で移動していた何かにぶつかったから」





 昼休みに、昼食時にその走りを見た異世界の生徒の面々の視線が、


 そして、その速さを誰よりも知っていて、すでに自白をしている存在へ向きます。





「最後の犯人は、島風さん。


 当時、最後の戦いにおいて、時空の裂け目が閉じる前に艦隊を脱出させるためとして送り込まれた、高速移動能力が備わるフリートレスの、太平洋側のメンバーの一人。



 最速の駆逐艦装少女デストロイフリートレス

 島風さん、あなたなんです。


 故意ではないにかかわらず、ですけど」




 その言葉に、ル・ファンタスクさんは涙を溜めた目で島風さんを睨みます。


 心なしか、別の場所で黙って座っているタシュケントさんの視線も鋭いです。


 ああ、責めてるとかそういう事じゃないですよきっと。





「‪……‬‪……‬最悪な気分だ。

 こんな事で、最速を決められるなんてさ。


 違うだろ。せめてちゃんとかけっこで勝負したいじゃないか」







 ‪────歴史上、40ノット以上を叩き出した艦はほんの少ししかいない。



 ル・ファンタスク級大型駆逐艦


 タシュケント級嚮導駆逐艦



 そして、島風型駆逐艦。




 そう言った高速の艦艇の名前を受け継ぐフリートレスたちは、どういうわけか皆が『自分が1番速い』と思っているらしいわけで。



 で、この異常自体が引き起こされた影で、偶然発生したかけっこで、完璧に負けた証拠突きつけられたらそりゃあ‪……‬‪……‬




「‪……‬決着はいつでもつけられますよー。


 でも、私達は先にやらなければいけない事があるんです。



 いわば、戦後処理。

 半分は私達のせいで空いてしまった時空の穴を、塞がなければいけないんです」




 隼鷹さんの言葉通りだ。





 これまでの全ては、いわば私達が勝った事から始まった出来事だった。


 なんで異世界に来てしまったのかも、

 なんと半分は私達のせいだった。




「でも、半分はこっちのせいだよ」



 そんな私の思いを読んだんでしょうか?

 フォロン提督がこちらを見てそう語りかけてきました。




「4分の1は、そこのお姫様のせいだけど。

 そこの、脚の速い島風って子が見た光は、もしかしたら私が使った禁術の方の召喚魔法かもしれない。


 いや、お姫様のだって、お姫様の面倒くさい性格考えないで行動してた私の非なのもある。


 ですよね、先生方?」



「それは、」



「そこまで分かっているとして、


 フォロン。お前はどうする?」



「当然、夕立たちと一緒に次元の穴を閉じます。

 それの評価とかも気にしてますけど、自分がやったことの落とし前つけられないような人間にはなりたくないです」



「提督!」



「そう、私は『提督』。

 夕立たちのマスター。まぁそこの隼鷹って人はどうか知らないけど、他のみんなは私の使い魔。


 手を貸して。私も手を貸すから。


 このお願い、聞いてくれる?」




 ‪……‬‪……‬ふっ。



 そりゃ、もちろん!



駆逐艦装少女デストロイフリートレス、夕立!

 フォロン提督の命令を受諾します!」


空母艦装少女エアクラフトキャリアフリートレス、アークロイヤル。これより『ご主人様』であるフォロン提督の元、誠心誠意ご奉仕させていただきます」


駆逐艦装少女デストロイフリートレス島風、当然自分の不始末は最速でつけるよ」


大型駆逐艦装少女ラージデストロイフリートレスル・ファンタスク、異論はありません。任務遂行によって最速の座も後で奪いますので」


嚮導駆逐艦装少女リーダーデストロイフリートレスタシュケント、同志提督の頼みを聞こうか。よろしく同志」



「っしゃァッ!!やるぜアタシは!!

 戦艦装少女バトルシップフリートレス、サウスダコタの名にかけてやるぜェッ!!」


「右に同じく戦艦装少女バトルシップフリートレスワシントン、まぁがんばるー」


「ま、太平洋側の不始末ぐらいはつけてあげますか。

 なんてったって最強の戦艦装少女バトルシップフリートレスリシュリューである私だものね」



「そこの戦艦もチビ提督も心配だからナ

 重巡洋艦装少女ヘビークルーザーフリートレスプリンツ・オイゲン、まぁ艦隊には入ってやるゾ」



空母艦装少女エアクラフトキャリアフリートレスグラーフ・ツェッペリン。右に同じく」



重巡洋艦装少女ヘビークルーザーフリートレス、ザラ。

 なかなかに素敵なお嬢さんの提督のもとに着任できた事、幸運に思うよ?」


軽巡洋艦装少女ライトクルーザーフリートレスダイドー、今より提督の剣となりあなたを御守りします!」


重巡洋艦ヘビークルーザーフリートレス高雄、異論ありません。

 ‪……‬というか、アタシ正直この世界でやっていけるか自信ないんですぅ‪……‬色々教えてくださぁい‪……‬!」


空母艦装少女エアクラフトキャリアフリートレス隼鷹、これよりフォロン提督の指揮下に入ります。よろしくお願いしますね、提督?」



「‪……‬‪……‬というわけです。

 やれるやれないに限らず、私達は時空の穴を塞ごうと思います!」



 フォロン提督の言葉に、二人の先生が笑みを浮かべる。



「‪……‬いい目をしている。やり遂げられる者の目だな」



「‪適当な事を言うな。

 だが、今は一人でも手がいるのも事実だ。

 先に言っておくが時空に関する禁術魔法は、私でもまだ全ては習得していないぞ?

 地獄を見る覚悟はいいな?」



「出世のためにもなりそうなので、地獄ぐらいはなんとかします」



 提督、そこ結構正直に言うんですね。


 ‪……‬ふふ、いや、そのぐらいの軽口言って貰わないと困りますか。

 みんなも同意見の笑みを浮かべますし。



「‪……‬提督、隼鷹より一つだけ。

 まず私達が目指すべきは、」





「────そんな相談をせずともよろしいですよ」





 その時、そんな声と共に何かが私たちに襲いかかった。






「あなた方『不信心者』達には、死んでもらいます」






 背中に激痛、何かが貫通して溢れた血が口から逆流したのは即座。


 一体何が!?

 いや、誰!??




          ***

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艦装少女-フリートレス-異世界に着任しました!? 来賀 玲 @Gojulas_modoki

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