ねぇ、教えてよ
竹垂雫
ねぇ、教えてよ
アタシには、恋人がいる。
付き合って半年の、愛しい人だ。
「お帰り、アナタ」
「ああ。ただいま、花譜」
ワタシには、この人以外考えられない。
なのに……なのに、どうしてアナタはキスマークなんて付けてるの?
―――ねぇ、教えてよ。
♢♢♢
「お帰り、アナタ」
「ああ。ただいま、花譜」
ワタシは、帰ってきた愛しのヒトを観察する。
身体の隅から隅まで、完全に把握しておきたい。知っておきたい。
―――愛しいヒトのことなら、無限に知りたい。
なのに……なのに、どうして2つセットの指輪なんて着けているの?
―――ねぇ、教えてよ。
♢♢♢
最近、アナタはアタシのを見てくれているの?
最近、アナタはアタシのことを考えているの?
最近、アナタは仕事をしてるから帰りが遅いの?
まだ、アナタはアタシとの約束を覚えているの?
本当に、アナタは接待でオカネを使ったの?
気になる。
それでも訊けない。
いいや訊かない。
だってアタシは、彼のカノジョだから。
♢♢♢
「今日は、多分会社に泊まることになると思うわ」
『そっか。頑張ってね』
「うん。ごめんね」
名残惜しいけれど、アタシは愛しいヒトとの電話を切る。
早く仕事を終わらせないと。
アタシは、家に帰ってきた。
仕事は、頑張って日付が変わる前に終わらせた。
きっと、アタシの愛しいヒトはもう寝ているだろう。
だけど、明日の朝から愛しいヒトに会える。
これだけでも、頑張ってよかったと思える成果だ。
扉の前につく。
中の電気はついていない。真っ暗だ。
静かに、音を立てないように扉を開けて中に入る。
アタシは、傘立てに傘を置く。
そこには、何故か傘が三本あった。
なんで?
どうして?
―――ねぇ、教えてよ。
ねぇ、教えてよ 竹垂雫 @sizukuhakidukuyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます