ストーリーは読んでいただくとして、この作品内にちりばめられているのは、福祉と称死傷される業種の光と影。それに尽きます。
私自身が幼少期12年少々、養護施設に入所を余儀なくされていたから、そのあたりは肌身でわかるだけでなく、現在も底をテーマに物書きをしているから、よくわかります。
およそ福祉に携わろうという人は、多かれ少なかれ人のために尽くしたいという思いがあり、それが嵩じてこの世界に入っていきます。
しかしそこには必ず、光ばかりでなく陰や闇もある。
狭い世界の中で自分自身がいかにも相手の支配者にでもなったかのような言動をする職員というのはいるものです。それは相手をうまくコントロールして、というより利用して、自分の実績を上げようという思いから来ている。
彼(彼女)自体は本来根っからの悪というわけでは無論ないだろうが、外から隔絶された中でそういう方向に走ってしまう者は一定いるものです。それがまったくうまくいかなければともあれ、なまじでもうまくいく事例が一つやそこらではなくいくつか出始めると、その成功体験に酔いしれてさらに突っ走り、いつかどこかで、取り返しのつかないことへと進んでしまう。
実は、福祉という世界は人を不幸にするシステムの極致なのかもしれない。
そんなことを、改めて思わされた次第です。