第8話   瞬が居なくなって

佳代子が玄関から「ただいま」と言って瞬の葬式から帰って来た。夏海も瑞穂も元気そうに「お帰り」と佳代子を玄関から出迎えた。

佳代子が「おぉ、瑞穂、夏海、良い子にしていたの?二人共元気そうで良かった」と佳代子が夏海と瑞穂の様子を見て安心していた。「お母さん、何処に行って居たの?」と瑞穂に声を掛けられて、佳代子は「あのね、少し買い物へ行って居たの。結局良い物が無くて帰って来ちゃった」とふざけたような顔をして瑞穂や夏海の顔を見ていた。夏海が「そうなの?お母さんも大変だね」と話をしていた。

夏海がお昼になっても来ない瞬を心配して辺りを見渡していた。夏海と瑞穂が二人で「ねぇ?お父さんが居ないけど、どうしたの?」と瞬が居ない事に気付いて佳代子に声を掛けた。佳代子が「あ~、お父さんは瑞穂と夏海を遠いお空から見守って居るよ。大丈夫。心配して不安になって居たら、私まで不安になっちゃうよ。元気で居よう」と瑞穂と夏海に声を掛けた。夏海も瑞穂も、学校へ行く為にランドセルや洋服を着させて小学校へ次ぐ日に登校させた。小学校ではお父さんと一緒に何処かへ行ったとか、お散歩しに行ったとか買い物へ行ったとか、そんな話でクラス中は持ち切りだった。夏海と瑞穂も「お父さんが居ていいなぁ。一緒に買い物も行けるし楽しいだろうなぁ」と羨ましそうにしていた。友達から「夏海も瑞穂も一緒に給食を食べよう」と教職を一緒に食べるように誘ったが、瑞穂は「本を読んでから、お昼食べるわ。先に食べていて」と友達の誘いを断った。友達が「分かったわ。伝えてくれてありがとう」と瑞穂にお礼を言った。その後、学校が終わって家に帰ると瞬の書斎の前に立って右手で洗濯物を入れた籠を抱えて佳代子は瞬が亡くなった事を想い泣いていた。夏海が心配をして「お母さん、どうして泣いているの?」と佳代子に声を掛けていた。佳代子は泣きながら「私ね。瞬と居た時は出掛けて、色んな所へ行ったし、子供が生まれた時に一緒に喜んでくれたし、寂しい時は何時も寄り添ってくれたのに、どうして亡くなるとこんなに寂しいのかな?今の心に埋まっていた瞬への想いが無くなってぽっかり心に穴が開いているみたいで悲しい」と夏海の身体を抱えて泣いていた。

夏海が「お父さんは、いつもお空で見ているよ。悲しい時も、辛い時も、お母さんの事もずっとずっと忘れないで居てくれているよ」と佳代子を心配して声を掛けていた。まるで、亡くなった瞬が佳代子の事も心配しているみたいだった。佳代子が「ありがとう。私が泣いていて、どうする。もっと、元気出さなきゃ」と夏海に言って涙を目に浮かべていた。

それからは、佳代子も夏海と瑞穂と共にこれからの成長を見守りながら、瞬をときどき思い出して毎日を悲しい気持ちに負けないように元気に暮らしていこうと心に誓った。



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瞬の物語 影山 みはつ @mihatsu1865

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