地獄の天使の旅

@sintakei

第1話 地獄でのお目覚め

目を開けると、俺は知らない建物にいた。どうやらここは病院らしい。俺、何か搬送されるくらいの怪我したっけ…覚えてないな…

ここは病院らしいが、何か異様なカンジがする。いつもと違う空気。

外国にでもきたみたいだ。

ふと、窓の外を見た。見たことが無い街並みがそこにはあった。

「…あ、起きてる」

後ろから声が聞こえ、反射的に振り返った。

「…え、?」

そこには化け物が立っていた。

「何よ、人を化け物みたいな目で見て…別に首から下は普通でしょ?」

化け物?が言う通り体の大部分は至って普通の人だ。白衣を着ているから看護師の女性と確認できる。だが、問題は首から上だ。

「あた…あ…あた…あた…」

「あたふたしてるわね…全く女の癖に品のない驚き方だこと」

人間の頭と引き換えに赤い液体が入ったワイングラスが頭になっている。

「頭がワイングラス…?」

「そうよ、ここの住民みんなそうなの!アタシだけ化け物じゃ無いんだからね!」

ワイングラスの女性は中の液体を波立たせ、息を荒げて言った。

「ここって一体どこなんですか?」

「ここは『地獄』よ」

「地獄…!?え…?え……?」

「アンタは死んだのよ」

し、死んだ…?俺が…?いつ…!

俺は頭を掻きむしり、記憶を思い出そうとした。

ダメだ、なんも思い出せない…

「どうせ死の瞬間なんて何も覚えてないでしょ?自分の名前さえ忘れてる人がいるんだから」

「藤江麗華…」

「…ん?それアンタの名前?」

「いや………俺の彼女の名前だ」

「きゃははははははっっはははは!!」

ワイングラスの女性は豪快に液体を揺らせながら笑った。

「アンタ面白いわね、一番最初に思い出すのが自分の事じゃなくて、彼女のことなんてっ…!もしかして、アンタのその頭部も彼女の頭部だったりするのかしらっ!」

頭部…?そうか、俺も地獄に来たなら頭部がこの人のように、違う物体になっているのか!

「俺の頭部って…」

俺は近くのテーブルの上に置いてあった、小さな置き鏡をすかさず見た。

「…麗華じゃないか」

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