第29話 ふふふ 今日の私はちょっと違うんだからね!
そして、その夜——
私は再び夢の中に潜る。
だけど今日の私は一味違う。いつもは憂鬱で寝るのが怖かったけど、今日はちっとも怖くない。だって、枕元でウサギさんが見守っているだもん。昨夜の突然駆けつけてくれた勇猛果敢な姿には元気付けられた。だから、きっと大丈夫だって——そう、思うようになったんだ。
それに、作戦だって一杯考えたんだよ?
……ん? なんの作戦かって? それは、あの赤い靄から逃げるためのだよ!
昨夜は何故か分からないけど、あの靄は動こうとしなかった。今日ももしかしたら、動かないでいるかもしれないけど、それは保証できない。だから作戦を考えたんだ。
起きている間なら、追いかけられることはないし、いくらでも考える時間はある。コレを利用しない手はないでしょう?
私はお馬鹿さんじゃないんだからね!
と……寝る前に、しっかりコンディションを整えないと! 準備を怠らない。
まずお風呂にゆっくり浸かって身体を温める。
そして、寝巻きは勝負服のウサギ柄! 服装だって妥協しない! (でも、夢の中だとセーラー服になっちゃうんだけどね)。
お布団の皺を“ピィーン!”と伸ばして、枕元にはウサギさんを置く。
——うん! 準備完了であります!! 軍曹!!
私は、そう思ってウサギさんに敬礼する。
さて……準備は全て整った。
部屋のランプを付けっぱなしにして——私は布団に潜り込む。そして、ウサギさんを抱き寄せて瞼を閉じる。
そしてゆっくりと意識の底に沈んでいくんだ。
私は、校舎で目を覚ます。
やっぱり私は夢を見る。
2日前に夢を見なかった時があったけど……見ないなんてことはやっぱりないみたい。
これについて1つ仮説を立てたんだけど……たぶん、夢は1日1回しか見れないんじゃないかなぁ〜〜って思うの。なんで、そんな規則正しいルールがあるのか訳が分からないけど、おそらく間違いないと思う。
私、夢から覚めた時、二度寝しちゃう時があったんだけど……その時も夢は見なかったんだ。今思えば……あれって日付が回ってなかったから夢を見なかったんじゃないかな? って考えたんだ。だって、それだと全てに説明がつくんだもん。
てっきり夜になったら見るモノだと思ってたけど……昼間に気絶するように寝てしまった時も校舎の夢は見た。かと思えばその日の夜はぐっすり、夢を見ることなく次の日にはルンルンでカウンセリングに出かけたの。コレは『夢は夜に見るもの』ってルールを否定してみせた。
つまり、これをふまえると……
夢は夜に見るんじゃなく、1日1回見るものだって気づいたの。これは、夢の中で日付を跨いだって、次の日にはカウントされずにね。
ふふふ……私って頭がいいのかも? こういう考察ぐらいお手の物なんだから♪
——ッカン!!
おっと! そうこうしているうちに遠くの方からはいつもの金属質な音。
あの靄は、今日は動いてるみたい。この音を聞くとそんな気がしてきた。
でも慌てることはないよね。わざわざ居場所を教えてくれてるんだから、私は音から逃げるように勝手口に向かえばいいんだけ。
まずは音を良く聞いて、どこから私のいる教室に向かっているのか、しっかりと突き止めなくちゃ。
まずは、廊下に出て……
「——ッイテ!?」
……え?
「——ッグヌゥウ!? ——オイ、結菜!! よくも俺様を踏んでくれたな! 重いんだよ! さっさとどきやがれ!! クソ!!」
——ッ!!??
「って……オイ? なんだよ!! ぐ、ぐるしぃ……抱きつくなぁあ!! 腹の中の、わたがァァァ……」
——ウサギさんだぁああ!! 今日もウサギさんが居る!!
寡言《かげん》の結菜〜〜毎日見る『夢』と鎌を無くした死神さんのお話〜〜 バゑサミコ酢 @balsamicvinegar
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。寡言《かげん》の結菜〜〜毎日見る『夢』と鎌を無くした死神さんのお話〜〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます