後編

から、もうすぐで一年。

あれから、小・中規模の空爆が、いくつかあったけど、あの日に比べれば、そこまで恐怖心はなくて、どちらかというと、呆れのほうが強かった。

ここはこんなに壊滅しているのに、國は気にせず戦争を続けている。

勝てるとでも、思っているのだろうか。

この場所以外にも、壊滅している都市もあると、聞いたことがある。

あの日に学校で手当てをされていた重傷者は、半年もたたずに亡くなった。

備品も設備も、人手も、なにもかも不足していたこの場所がっこうで、重傷者が生き残れるはずがなかった。

軽傷者も、かろうじて生き延びることができても、軽い後遺症が残る人がほとんどだった。

私も、頭に怪我をしてしまっていたため、ケロイドが残った。

ケガ人の呻き声が溢れ、窮屈だった学校は、今はもう、廃墟と言われてもおかしくないくらいの静寂に包まれている。

ただ、一日のうちの何時間かだけ、少しにぎやかな時間があった。

教師たちが、ケガ人たちの手当ての合間を縫って、私を含めた、何とか生き延びた子供たちに、勉強を教えてくれていた。

でも、そのときの笑い声も、いつの間にかなくなっていた。

ケガ人たちの手当てをしていた教師たちは、いつの間にか栄養失調で倒れていた。

人のことばかり考えて、自分のことを後回しにしすぎたからだ。

…なぜ、善良な人ばかりが不幸になるのだろう。

友もそうだった。

私なんかを気にして、自分のことはいつも後回し。

だから、あの時死んだんだ。

あのとき、無理だってなる前に、私に言わなかったから。

無理でも、私に言ってくれたなら、背負って一緒に逃げたのに。

わざわざ、手を離すなんてするから。

…なんて、今更思っても仕方がないのに。

こんなに、悲しい。

友は悪くない。

わかってる。

これは仕方のないこと。

わかってるけど。

どうしようもなく、苦しい。


急に、あの日と同じように、視界が白く光った。

今回は、爆風や熱風から私を守ってくれるものは、何もなかった

…はずだった。

「なんで…。」

気付いたときには、人だったはずのなにかが、私に覆いかぶさって、

焼け焦げていた。

すぐにわかった。

これは、教師せんせいたちだ。

まただ。

また私のせいで人が死んだ。

あの日、火の海に溶かしたはずの水滴が、頬を濡らす。

二人を抱えて、空を見上げる。

空をかたどっていた瓦礫フレームは、すべて消え去った。

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記憶のカケラ RiR @otk-writer

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