そして君はヒーローに

@anatahe

プロローグそして君は

また夏が過ぎ去る、どこからか聞こえる話し声にふと立ち止まる。

「ぎゃおー!」

「誰か助けて!」

「待たせたね!仮面ヒーローレッド参上!」

懐かしい、僕も昔はああだった。無邪気に、いつか自分はヒーローになってみせるのだと信じて疑わず毎日を楽しく生きていた。あの日々は美しく、いつまでも色褪せずに僕の記憶に残っている。しかし、現実は無情だ、いくつもの物事が交差し、より酷に、より難解に進んで行く。そんなことを考えているとインカムから声が聞こえる

「真也、お前のいるところから約500メートル先に波の揺らぎを観測した、あと30秒で来る。急いでくれ。」

「了解した、これより白銀真也、壊獣討伐に向かう。」

そう言い僕は通信を切った。

「セット、ペルフェジオンtypeΩ。」

『WARNING!WARNING!WARNING!』

「変、身」

『ペルフェジオォンタァイプゥオメガァ!』

そう言った機械音が響くと僕は真っ黒な金属質の鎧に身を包む。体が軽く、脳がスッキリとする。僕は凄まじいスピードで走り出す。

しかし既に壊獣はそこにいた。観測情報よりも少し早く出現していたらしい。近くには3人の子供がいる。先程ごっこ遊びをしていた3人だ、片方は怯えて動けなくなっており、もう片方は怯えている子供と壊獣の間に達手を広げ、もう1人の子供を守ろうとしている。

「来るなら来い!俺が相手になってやる!」

そうは言い少年は壊獣を睨みつける。

僕は走って跳んだ、そして跳びながら壊獣に蹴りを入れた。壊獣は勢いよく吹き飛ぶ。そして光の粒子となり消えていった。

「よく頑張ったね。」

「大丈夫!俺は強いから!」

足を震えさせながら少年はそう言う。

「そうだね、君は強いよ。」

そういい少年の頭を撫でる。そうすると少年は少し涙をこぼす。泣きながら少年は僕に聞く。

「俺も、あんたみたいに強くてかっこいいヒーローになれるかな?」

「君はきっと強くなれる。」

そう僕が言うと少年の涙の勢いが強くなる。

あぁ、僕は知っている。君は強くなる、君は、憧れたヒーローになり、様々な人々を守り、大切なものを手に入れ、そして失い、遂には自分が守ろうとしていたものの醜さを知り、今までの行動に価値はあったのかと嘆き、世界に絶望してしまう。そして君はヒーロになれない。

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