第1話 強欲な私

1

私は自分のことがよくわからないことがある。

何がしたくて何が好きで、何を求めているのか。

欲というのは私自身を狂わせるもののように思う。

朝起きて目を開けるまでにもう一度寝たい、目を開けたくない。そう思う時がよくあるだろう。

または、お腹が空いた時私たちはまず作るか買うかを選ぶ、それから何を食べるかのように私たちは知らないうちに欲のままにいろんなものを求めている。

欲に満ち溢れ、欲に溺れる人は私は嫌いだ。

でも、私自身もまたその一人、ふとしたときに自分のいいように物事を選択していく。

欲を出すことを嫌だと思うようになったのは幼き頃の出来事からだった、


2

私には兄弟がいる、周りに話すと珍しいと言われる男3人の三兄弟だ。

長男の光樹(みつき)次男の月斗(つきと)そして私の樹(いつき)普通の兄弟と比べてみてはあまり仲が良いとは言えない。兄を兄と呼んだこともなくみんな呼び捨てで呼んでいた。

みんなが自分勝手で相手の意見を聞かない。話し合いやら喧嘩だったりしたときにはどちらかが折れるまで終わらない。だが、大抵は歳上が折れるから私は優遇されていたと思う。

年齢だけでみたら1番年下で力が強いわけでもないが、歳下という最大の特権を利用しているからこそ、私が折れることはなく自我が強いまま生活を送っていた。

そんなある時、いつのものように兄と喧嘩をしていた。ことの発端は本当に小さく忘れるようなことで喧嘩をしていた。よくあるおやつで喧嘩したのだ。

いつもの様に一つのお菓子を3人で分け合って食べていた。

「お前たち今日はどれ食べたい」

光樹が二人に問いかけた。

この家では光樹が今日のおやつを決めている。

いつも弟達に問いかけるが最終的に決めるのは光樹だ。


「俺たちはなんでもいいよ」


月斗の言葉に合わせて私も答えた。

「どうせ光樹が決めるんでしょ」

こんなやりとりをほぼ毎日行っている。

光樹もこの返しをわかっているが、とりあえず聞いているらしい。

本当に意味のない会話だと私は毎回の様に思う。


「今日は甘いものが食べたいからこれだな」


光樹が選んだのはチョコレートがコーティングされているお菓子だった。

厳密に言えばアーモンドにチョコが張り付いてるだけで、そこまで甘いわけでもないお菓子なので、私はあまり好きではない。

お菓子を決めた後にはいつも光樹がみんなの分を分ける。

喧嘩にならない様にと母にみんな同じ数分ける様にと言われているからだ、今回もキリが良いものでみんなに7個配られる形となった。


「よし、配り終えたし食べるか」


いつも光樹そう言ってから食べるような感じだ。


「光樹のお菓子の方が多いよ!」


いざ食べようとした時に私が言った。

正直あまり違いはないがたくさん食べたくて、いちゃもんをつけていた。


「そんなことないだろ、樹のとおんなじだぞ」


真っ当な意見だ、形もそれほど相違ないので、そう言われると私も思っていた。だが、たくさん食べたい気持ちは曲げられなく何度も同じことを繰り返していた。


「樹、そんなにいうなら交換するか?」


光樹は喧嘩にならない様私の意見に合う様な提案をしてきた。

量は変わらないから私的には意味がないことだと思った。

そんな会話をしてる最中に、月斗は黙々と自分の分を食べていた。これもいつものことだ、私にいちゃもんをつけられた側が私を説得し、もう一人は黙々と食べて関わらない様にしている。

いつもはここで交換をして終わりなのだが、今回ばかり違った。


「毎回毎回うるさいんだよ」


呆れたかのような声で月斗が口を挟んできた。こう言われるのもしょうがない、本当に毎回このくだりをしているからだ。


「なんで毎回いちゃもんつけるんだよ」


月斗の言葉に合わせて光樹もこえをあらげて答えた。毎回のことで、イライラしていたところで、我慢の限界が来たようだ。

二人に言われて少し涙ぐんでしまった。


「だって、い、いっぱい、たべだいんだもん」


涙交じりの声で私は答えた。

今思うと本当に強欲な考えだと思う。


「俺たちだっていっぱい食べたい、でもお前の分をよこせと言ったことがあったか?それに、横取りしたりいちゃもんをつけたことがあったかよ」


光樹が答えた。いつもなら言わないようなセリフだが今回はそれほどまでに我慢の限界が来ていたのだろう。

その威圧的な言葉に私は言葉が出なくなってしまった。


「お前は欲しいと思ったらなんでももらえると思いすぎだ、それに全て自分の思い通りになると思うなよ」


月斗も我慢の限界が来ていたようで、今までにないくらいの迫力で言葉を浴びせてきた。


「お前は強欲すぎる、相手の立場になって考えろ」


二人ともこれまで我慢していたのだ、限界が来てもおかしくないだろう。

私は結局何も言えないままで、渡された分のお菓子を早速と食べて自分の部屋に逃げてしまった。

私は二人に言われた言葉が頭から離れなかった。特に最後に後期から言われた「強欲」と言う言葉だった。まだ私にはその言葉の意味がわからないが良い言葉ではないと言うことだけはなんとなくわかった。その意味を考えているうちに私は眠りについていた。

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私が嫌い @Katsu_i

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