第13話 あの美人転校生が接触してくる。
速水 麻里に自分がタイムリープをしていることを伝えた次の日。
拓朗は本日も学校がある。
今日も家の前まで迎えに来てくれていた千尋と一緒に登校し、隣の席の樹里には昨日麻里から得た情報を取り入れつつ、彼女を安心させられるように上手く夢の話をした。
そしてホームルームの後、ついにあの女子生徒が接触して来た。
「おはよっ、時野くん」
「あぁ……おはよう」
その女子生徒――夢咲 奏とは、この世界線ではあのバイト先で数回会話を交しただけだ。
拓朗が告発したため、パワハラクズオーナーが経営していたあの飲食店は潰れ、奏ともそれきりだった。
しかし先日、彼女は拓朗の高校へと転校してきた。しかも同じクラス。
明らかにおかしいと感じた拓朗だったが、昨日は麻里と会う予定があったため奏とは会話をせずに高校を出たのだ。
いずれ話しかけることにはなるだろうと思っていたが、早くも奏の方から話しかけて来た。
「あの飲食店、まさかあんなヤバいとこだったとはねー、わたし初めてのアルバイトだったからさ、時野くんのおかげで助かっちゃった」
「あはは……まぁ、俺も初めてのアルバイトだったんだけど、あのオーナーが許せなくてつい衝動的に警察を呼んじゃってさ……」
拓朗は奏と会話を続ける。
しかし彼は思っていた。奏はこの2週目で明らかに行動がおかしい。
(もしかしたら、奏こそが昨日麻里さんと話していた俺以外の世界を観測する存在なんじゃ……)
そんな考えが脳をよぎってしまうばかりに、思うように自然に話せない。
「あれ、時野くんと夢咲さんって知り合いなの?」
そんなとき、本人は図らずとも助け舟を出してくれたのは樹里だった。
「うんっ、時野くんとはバイト先が同じでね。まぁ……オーナーがヤバいやつでこの前閉店したんだけどさ」
「あー、最近ニュースにもなってたね。てか時野くんホントすごいじゃん」
「いや、俺ただ警察呼んだだけだし……」
「いやそれがすごいんだって。普通そこまでできないし」
樹里が会話に入って来たおかげで、拓朗は自然に会話を交すことが出来た。
そして、1時限目の授業が始める5分前の予鈴がなる。
「あー、そろそろ1時限目始まるね。時野くんも瀬川さんも、またあとでゆっくり話そっ」
「おけ~」
樹里の返答とともに、自分の席へと戻ろうとする奏。その際、小声で奏が拓朗にだけ聞こえるように囁いたのが聞こえた。
昼休み、屋上で待ってる――
高校の入学式にタイムリープしたので、諸悪の根源である悪友たちとの関係を絶ち切って後悔していたことをすべてやり直していたら……1周目では悪友たちに奪われた美少女全員に惚れられてるんだが! 踊る標識 @odoru_hyousiki
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