あの子への愛の伝え方は
死体を埋めた。
タオルやブルーシートで、ありったけ包み込んで、これ以上彼が酷い目に遭わないように。隠して、隠して。
埋める場所は慎重に吟味した。
真夏では彼をそのまま隠すのは長くは持たないから、急いで。
色々調べて……結局、自宅が一番安全なんじゃないかと思った。それに、そこならすぐに会いに行くこともできるし、花を植えてあげることもできる。
無駄に広いと思っていた庭が、これほどまで嬉しいと思ったことはない。広ければ広いほどに花を植えてあげることができる。
花畑を作ってしまおう。彼のために。
――私が逮捕されるのはいい。だけど、彼を掘り起こさせはしない。彼の死体を、ただ血の繋がりがあるというだけの人間に渡しはしない。
あなたは愛されていたんだって。愛されていい存在だったんだって。もう彼の魂はここにいないけれど。きっと、見てくれているって信じて、たくさんたくさん伝えるんだ。
「……ごめんね」
土をかけながら、私は呟いた。
もっともっと早く、もっともっと伝えられていたら、彼は死なずに済んだかもしれないのに。
頬を拭う手から、彼の血のにおいがした。
◆
「あ」
気がついたら、自分を刺していた。
頭の中が真っ白になって、弾けて……そうしたら。
どくどくと心臓が脈打ってるのを感じる。
吐き気がして、ぐるぐると目が回って……死を直感した。
死ぬのは怖くない。
だけど。
――死ぬならあの人のそばがいいなぁ。
ごぽ、と口から血が出た。視界が霞んでよく見えない。でも大丈夫。あの人はすぐ近くにいる。
行こう。あの人のそばへ。
大好きなあの人のそばで。あのあったかい気持ちで、死にたいなぁ。
死体を埋めた 春野訪花 @harunohouka
ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?
ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。死体を埋めたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます