あの子への愛の伝え方は

 死体を埋めた。

 タオルやブルーシートで、ありったけ包み込んで、これ以上彼が酷い目に遭わないように。隠して、隠して。

 埋める場所は慎重に吟味した。

 真夏では彼をそのまま隠すのは長くは持たないから、急いで。

 色々調べて……結局、自宅が一番安全なんじゃないかと思った。それに、そこならすぐに会いに行くこともできるし、花を植えてあげることもできる。

 無駄に広いと思っていた庭が、これほどまで嬉しいと思ったことはない。広ければ広いほどに花を植えてあげることができる。

 花畑を作ってしまおう。彼のために。

 ――私が逮捕されるのはいい。だけど、彼を掘り起こさせはしない。彼の死体を、ただ血の繋がりがあるというだけの人間に渡しはしない。

 あなたは愛されていたんだって。愛されていい存在だったんだって。もう彼の魂はここにいないけれど。きっと、見てくれているって信じて、たくさんたくさん伝えるんだ。

「……ごめんね」

 土をかけながら、私は呟いた。

 もっともっと早く、もっともっと伝えられていたら、彼は死なずに済んだかもしれないのに。

 頬を拭う手から、彼の血のにおいがした。



「あ」

 気がついたら、自分を刺していた。

 頭の中が真っ白になって、弾けて……そうしたら。

 どくどくと心臓が脈打ってるのを感じる。

 吐き気がして、ぐるぐると目が回って……死を直感した。

 死ぬのは怖くない。

 だけど。

 ――死ぬならあの人のそばがいいなぁ。

 ごぽ、と口から血が出た。視界が霞んでよく見えない。でも大丈夫。あの人はすぐ近くにいる。

 行こう。あの人のそばへ。

 大好きなあの人のそばで。あのあったかい気持ちで、死にたいなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死体を埋めた 春野訪花 @harunohouka

作家にギフトを贈る

カクヨムサポーターズパスポートに登録すると、作家にギフトを贈れるようになります。

ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?

ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ