デート

第3話

歩いてるなか、傘に落ちていく雨音だけがした。

「なんか、デートみたいだね」と香菜は嬉しそうに言った。


え?デート?そういうことなら、と走って帰ろうとすると、香菜はそれをキスで封じた。レモンの香りがした。


レモンの香り…懐かしい。僕が香菜に小学生の頃、あげたガムの匂いだった。

まだ持ってたのか…。


僕は、「まだ持ってたんだ」と嬉し顔で言うと、香菜は恥ずかしそうに「寂しかったのよ、翔。いつも私を見ても素通りするじゃん…だから、昔もらったガムを買ったの」と言った。


そんな顔もするんだ……翔は小学生の頃に戻った感覚がした。ニコニコして、翔は香菜の傘に入りながら、香菜の手を取った。


あれ?そういえば、あの取り巻きたちは?と思い、それを聞くと、「ダメよ、あの人たち。私の気持ち、分からないもん……。それに翔は」と言った途端、無性に僕は香菜を歯がゆく思い、香菜を抱きしめた。香菜もそれに応え、傘はゆっくりと地面に落ちていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@mamoru_n

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ