1383 動き出してしまった運命の歯車

 崇秀さんとの関係を、惚気ながらも奈緒さんに話す眞子。

ただその中には、倉津君が聞いたら少々ヤバい話も含まれてはいたものの。

取り敢えずは何事もなく、楽しく話を続けていたら……喋り過ぎて少し喉が渇いてきたので(笑)


***


「……さて、奈緒ネェ」

「うん?なに?」

「お喋りしてたら、私、ちょっと喉が渇いちゃったんですが、奈緒ネェはなにか要りませんか?良かったら、なんか淹れて来ますけど?」


……等と、まだコタツに入ったまま、そんな質問だけを投げ掛けて見た。


勿論、炬燵の中で質問をしたと言っても、飲み物を淹れる気は満々にあるのですよ。

ただね。

究極的に寒がりな私が直ぐに炬燵から出ちゃうと、簡単に冷えちゃうので、炬燵の中で奈緒ネェの回答を聞いてから行動に移そうと思ってた次第なのですよ。


ちょっと横着な感じなんですけどね。



「あぁそうだね。じゃあ、折角だから、なにか頂こうかな」

「なににします?」

「なににします?って言うより、なにがあるのよ?」

「えぇっと、コーヒー、紅茶、ココアに、日本茶って所ですかね」

「そりゃあまた定番だね」

「ですです。あぁ、因みになんですけど、どの飲み物でもアイスも、ホットも両方用意できますよ」

「ふ~~~ん。まぁ、そうやって用意出来るのは解ったんだけど、この糞寒いのにアイスとかイラナイっての。大体にして、こんな寒い時期に、誰が、そんなもんを好き好んで飲むのよ?」


まぁ、普通に考えれば、この時期にアイスを飲む人は早々にはいませんよね。


ですが。

私がこうやって用意してると言う時点で、アイスを飲む人が身近にいる証拠だったりします。


それが誰かと申しますと……



「崇秀さん」


勿論、崇秀さんです♪


そして理由はと申しますと……



「なんでまた?」

「冷まさずに、直ぐに飲めるからだそうですよ」

「あぁ、なるほど、そう言う事ね。それはまたなんとも、仲居間さんらしい発想だね」


基本的に崇秀さんは効率重視ですからね。


でも、2人でのんびり寛いでる時なんかは、結構な確率でホットを飲んでくれるんですよ。


しかも、飲み難いのが解ってる筈なのに、いつもの例の体勢で……(∀`*ゞ)エヘヘ♪



「ですよね。……っで、どうしますか?結局なんにします?」

「そうだねぇ。この部屋って大分寒いから、出来れば温かい紅茶が欲しいかな」

「了解です。……あれ?でも、この部屋寒いですか?」

「うん。ちょっと寒いわね」

「あれれ?そりゃあまた、おかしいですね?私は寒がりだから、いつも暖房ガンガンに効かせてるから……って!!あっ」

「うん?どうしたの?なんかあったの?」

「あぁいえ。今まで全然気付かなかったんですが、よく見ると、ちょっとだけ部屋の扉が開いてましたね。どうやら寒さの原因は、これだったみたいですね」


ホント、言われるまで全然気付かなかったよ。

まさか、知らず知らずの内に、扉が少しだけ開いていたとはね。


特に私はドテラを着て、コタツに入ってぬくぬくな人なんで、顔以外は、あまり寒さを感じないし。

それに奈緒ネェも、外の寒空から部屋に入って来た後だったから、部屋の温度の高さで、寒さを、今まで感じなかった。


そんな感じなので、奈緒ネェが扉を閉め忘れちゃったのかな?


大体そんな所かな?



「えっ?嘘?私『カチャ』って音が鳴るまで、ちゃんと扉を閉めたわよ」

「えっ?……じゃあ、なんで扉が開いてたんだろう?……ってか、まぁ良いっか。そんなに深く考える様な事じゃないですもんね」

「ふふっ……だよね。ホントそうだよね」


……等と、そんな風に呑気に扉談義をしながらも。

部屋に寒気を運んで来る原因になっているであろう扉を閉め様と、私がノブに手を掛けた瞬間。


なんの前触れもなく、突然……


『ガンガラガッシャ~~ン!!』

……っと、下の『N`s F』から、なにやら物凄い物音が鳴り響いた。


しかも、その後。


『『『『『きゃああぁぁあぁ~~~!!』』』』』

その音と共に、女性数人の悲鳴までもが木霊した。


えっ?えっ?何事?


私が、そんな風に焦ってると、更に……


『ふざけんなよ、崇秀!!テメェ、自分のやった事の区別も、まだつかねぇのかよ!!』

今まで聞いた事も無い様な真琴ちゃんの怒り狂った怒声が、此処、二階まで完全に響き渡った……


えっ?えっ?本当になにこれ?

一体、下の店でなにが起こってるって言うの??

って言うか。

どうして真琴ちゃんは、崇秀さんに怒鳴りつけてるの?

そんなに真琴ちゃんが怒るほど、崇秀さんが、何をしたって言うの?


えっ?えっ?訳が分からない。


・・・・・・


( ゚д゚)ハッ!


いや、ちょっと待って……


これって……まさか部屋の扉が開いていたのと……


***


 ……これが今回のサブタイトルに『Ira(怒り)』と付いていた理由であり。


今までみんなで大切に築き上げてきた色々な物が壊れ始める『序曲』だった。



動き出してしまった運命の歯車は。


もぉ……誰かが、なにかの代償を払うまでは、止まる術を知らない。


***


次回予告。


あぁそうかよ、そうかよ、そうだったのかよ。

オマエ等は、俺の知らない所で、そんな真似をしてやがったんだな。

しかもオマエ等は、そんな事をしながらも、そんな風に俺の事をズッと馬鹿にして見てやがったんだな。


そりゃあオマエ等のとっちゃあ、さぞかし愉快で面白い光景だっただろうな。

馬鹿が一人で浮かれて、お釈迦様の掌の上で猿踊りってか?


オマエ等の様な優秀な人間共には、さぞかし、俺の姿が滑稽に写ったんだろうな。


オイ、ふざけんのも大概にしろよ……


あんま人様を舐めてんじゃねぇぞ。


テメェ等だけは全員、なにがあっても、マジで許さねぇからな。


次回。


『Lost heart』

「失われた心」


チッ……あぁ、もぉどうでも良いわ。


ドイツもコイツも、もぉ自分の思い通りに好き勝手しろよ。


俺の知った事か。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【後書き】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>

これにて第一章・第八十三話『Ira(怒り)』はお終いに成るのですが、如何でしたでしょうか?


……っと言いますか。

こうやって最後の最後でドンデン返しをかまし、倉津君を怒らせ。

今までのほほ~~~んとしていた雰囲気をブチ壊してまで、こうした理由は……複線回収だったりします。

要するに、これが前回の八十二話での予告(倉津君が『チッ』っと舌打ちしただけ)の伏線回収だった訳ですね。


あの時、怒っていたのは倉津君であり、プンスカ怒っていただけの眞子ではなかったと言う話です。


(*'ω'*)←本当にロクデモナイ事ばかり考える人(笑)


さてさて、そんな修羅場を作った所で、このお話はお終い。

こんな状態の中で次回から始まる第一章・第八十四話『Lost heart(失われた心)』では、疑心暗鬼に陥り、誰も信じられなくなってしまった倉津君は、一体、どうなってしまうのか?


そして、そうなってしまった原因は、なんなのか?


そんなキツイ内容の話を、次回からは書いて行こうと思いますので。

倉津君の行く末が気になった方は、是非是非、遊びに来て下さいねぇ~~~♪

(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

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