君が見てる世界、私が見てる世界

まんぷく犬

第1話 2人の関係

カランコロン

これがなるのは古きよきカフェの文化。喫茶店の文化である。


「いらっしゃいませ!ってまたおにぃさんですか………」


「リリちゃん。こんにちは。やっぱり繁盛してないんだね。珈琲1つ。」


「はい。かしこまり………って繁盛してないって失礼な!」


「だってさっきの言い方なら俺が今日初めてのお客でしょ?」


「ぐふっ。」


「いい加減場所変えたら?あ、珈琲ありがと。」


「いやです!この山奥の景色で客を釣るんです!」


「いや、釣れてないじゃん。」


「ぐふっ。ぐふっ。」


「…………珈琲は美味しいんだから場所変えたら繁盛するでしょ?」


「嫌です!」


「こだわり強。」


「おにぃさんだって毎日毎日来るじゃないですか!それは景色がいいからでしょ?」


「いや、リリちゃんを茶化しに来てる。」


「むぅ~。」


「怒らない怒らない。てかいつ見ても殺風景だね。モノ置いたら?」


「殺風景がいいんです。ちなみにテレビもないので全くニュースとか分かりません。」


「リリちゃんバカになるよ?」


「ちょ、直球ボールは流石の私も食らいますよ?」


「アハハ。ごめん。ごめん。からかっただけ。ホントに見てて飽きないね?キミは。」


「そうですか?」


「ホントに可愛い。」


「う、う、うるさいですね。またバカにして………」


「えへへ。照れた?ごめんね。じゃあまた明日も来るから。」


「あ、お代は250円………」


「1万で。」


「え?いや、いつも言ってるじゃないですか。そんなもらえませんって………そんなもらう………」


「楽しい時間に値段をつけただけだから。もらっといて。じゃあ、またね。」


「あ、おにぃさん………行っちゃった……」



ここはカフェ 金木犀 山奥の中にある誰も来ないような店。来るのはあのおにぃさんくらい。


「優しいな………やっぱり好きだな………」


私はおにぃさんが大好きだ。1万もくれるのは私が日々の生活に困らないために出してくれているんだ。優しい。優しい人だ。


「おにぃさん。だから私もおにぃさんのこと守るからね。」



スマホのニュースには殺人と書かれていてそこには容疑者の顔が。おにぃさんの顔が。



「私だけは知ってるよ。おにぃさんが殺人者だってこと。」









「リリ。何で場所変えないのか分かんないなぁ。あの見た目とスタイルなら味がどうであれ場所によっちゃ繁盛するのにな。」


そう思いながら歩く。乙女の心は分からない。


「おっとアブね」


警察だ。パーカーでも被ってよ。


「まぁ、まだ見つかる訳にはいかねーな。リリがしっかりとした金の出所とかが出来ればもうそれでいいんだが、それまではな。流石に見過ごせないしな。」


1枚の古い写真を見ながら話す。


「リリ、いや、オレの唯一の家族、妹よ」

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