おわりに

 多くの質問に横断していた傾向として、今の20代は「コミュニケーション」「協働」を重視している人が最も多いように感じました。


 それは旧来の日本的な、なれ合いや、事なかれ主義ではなく、長所や考え個性を尊重しあってそれぞれの能力を最大限に発揮して、組織上の成果も最大にする。そして伝えたいことは伝えられる「心理的安全性」の高い環境を指しているように思いました。

 日本の核家族化から個人主義が広まったとされて久しいですが、今の20代はただ自分の欲求だけを押し通したいのではなく、「私もあなたのパーソナリティを尊重するから、あなたも私のパーソナリティを尊重してほしい」という声を上げているのではないでしょうか?


 「Q3. あなたが上司に期待することはなんですか?」のアンケート結果で如実に現れていますが、今の20代は「傾聴」「1on1ミーティング」など、1人1人の声にしっかり耳を傾けてくれることを上司に求めています。


 対して、いわゆる価値観の一方的な押し付け――職種を問わず全国で通じる「マナー」や「社会人としての心掛け」の習得については(Q5の設問ではやや後退しているが)必要性を感じているものの、社是や理念、ある企業内だけのローカルルールの遵守は優先度が低いと考えている節があります。

 また「コミュニケーション」重視の反動か、「競争」についても必要ではあるとは考えていますが優先度は劣ると捉えているようです


 すなわち、「社是」や「理念」、一方的なルールの押し付けでは若手の心はまとまらず、1人1人に細かなサポートをしていかなければならない。

 組織を運営する多忙なリーダー側としては、「傾聴」や「1on1ミーティング」でかかる手間を考えると、頭を抱えてしまうかもしれません。

 かくいう私も以前、いわゆるサーバントリーダー(※1)としてのふるまいを長期的に求められ、心身を壊した経験があります。20代の欲求全てをかなえるのは茨の道だとは理解しています。


 しかし、これらの20代の希望を1つ蔑ろにすると、職場への定着率が1ランク下がるおそれがある。活気が失われ、ひいては全体の経営状態が後退するかもしれない。そのリスクは考慮して、取捨選択をした方がよいかと感じました。


 最後に、大変有意義なアンケート・統計を毎年無償で公開してくださる、クルートマネジメントソリューションズ様に厚く御礼を申し上げ、本コラムの〆とさせていただきます。



(※1) サーバントリーダー

 端的にいえば部下に積極的にかかわり、耳を傾けて世話(奉仕)をするリーダー像。

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