第25話:「続く日常」
陽竜の月が終わり、街は炎竜の月の始まりを迎えた。炎竜の月は、その名の通り暑さが増し、街全体が活気に満ちる季節だ。街の市場では、たくさんの商人たちが活発に取引をし、冒険者たちも依頼をこなすために忙しく動き回っていた。
「炎竜の月か……暑くなってきたな」
ガルドはギルドの外に出て、強い太陽の光を感じながら呟いた。この時期は依頼も多く、冒険者たちにとっては忙しい季節でもある。
その日、ガルドは森の奥にある古い鉱山での採掘依頼を受けていた。鉱山から取れる鉱石は街の鍛冶屋にとって重要な素材であり、暑い時期にも関わらず多くの冒険者が訪れる場所だ。
「今回は鉱山か……まあ、これも大事な仕事だ」
ガルドは道具を持ち、炎竜の月の強い日差しの中を進んでいった。鉱山の周りは少し涼しく、暑さを感じる街の喧騒から離れた静けさが心地よかった。
鉱山での採掘は予想以上に順調に進み、ガルドは必要な量の鉱石を集めることができた。街に戻る頃には、太陽が傾き始めていたが、街全体が夕暮れの活気で満ちていた。
「依頼も無事終わったし、あとはギルドに戻るだけだな」
ガルドは街の景色を眺めながら、街の人々の笑顔を見て微笑んだ。彼の地道な仕事が、この街を守っているという実感が胸に広がった。
ギルドに戻ると、エリシアがガルドを迎えた。
「おかえり、ガルド。今日も無事だった?」
「もちろんだよ。鉱石も無事に集めてきたし、街の鍛冶屋もこれで安心して仕事ができるはずだ」
ガルドが笑顔で答えると、エリシアも安心したように微笑んだ。
「本当に、あなたはこの街を守っているのね」
エリシアの言葉に、ガルドは軽く笑いながら首をかしげた。
「いや、ただのCランク冒険者さ。俺はこの街でやれることをやってるだけだよ」
夜、ガルドとエリシアは静かな酒場で二人きりの時間を過ごしていた。街の外の冒険とは異なり、静かな日常が二人の心を穏やかにしていた。
「これからも、こんな日々が続いてほしいわ」
エリシアが静かに呟くと、ガルドはその手を握り返し、静かに頷いた。
「俺もだ。万年Cランクで、こんな小さな依頼をこなしながら……俺にできることを続ける。それが、俺にとっての幸せだ」
そして、二人は夜空の星を見上げながら、静かに未来に思いを馳せた。
万年Cランクの冒険者ガルド 雪白紅葉 @mirianyu
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