第24話:「穏やかな日常」

 季節は陽竜の月の終わり頃。暖かな風が街中をそよぎ、太陽が眩しく輝く日が続いていた。街の人々は日々の忙しさに追われつつも、どこか春の陽気に包まれ、穏やかな日常を楽しんでいた。


 ガルドはいつものようにギルドで依頼をこなしながら、その日も地道な仕事に取り組んでいた。


「今日は薬草の採取依頼だな……まあ、こういうのがちょうどいいんだ」


 ガルドは笑いながら、ギルドから受け取った依頼書を見つめていた。薬草の採取はCランクの冒険者にとってはよくある依頼の一つだが、それでも街の人々にとって重要な仕事だ。


「エリシア、今日はちょっと森まで行ってくるよ。薬草の採取依頼だ」


 ガルドはギルドに寄り、エリシアに声をかけた。エリシアはその声に軽く振り返りながら、「気をつけてね」と微笑んだ。


「薬草の採取は大変だけど、これも街の人たちには欠かせない仕事だからね」


 エリシアの言葉にガルドは頷き、彼女に安心してもらうためにも、いつものように気楽な笑みを浮かべた。


「大丈夫だよ。こういう仕事は俺の得意分野だからな。サクッと終わらせて帰るさ」


 ガルドは森に向かい、目的の薬草を探して歩き回った。森の中では、季節の移り変わりを感じさせる花々が咲き乱れ、風に乗って甘い香りが漂っていた。


「陽竜の月ももうすぐ終わりか……」


 ガルドはふと立ち止まり、木々の間から差し込む太陽の光を見上げた。季節の変わり目を感じながら、彼は日々の平穏に感謝していた。ゼヴォルスとの戦いも終わり、今はこうして穏やかな依頼をこなす日々が戻ってきている。


 薬草の採取は思ったよりもスムーズに進み、ガルドは依頼を無事に終えることができた。街に戻る頃には、陽竜の月の夕焼けが街を美しく染めていた。


「やっぱり、こういう穏やかな日常が一番だな……」


 ガルドは自分の歩む道に再確認のように呟きながら、街の景色を眺めた。Cランクの冒険者としての地道な依頼をこなし、街の人々を守りながら生活する――それが彼にとっての幸せな時間だった。


 ギルドに戻ると、エリシアがカウンターで何やら仕事をしている姿が見えた。ガルドは彼女に近づき、無事に依頼を終えたことを報告した。


「おかえり、ガルド。依頼は順調だった?」


 エリシアが優しく微笑んで尋ねると、ガルドは「もちろん」と軽く笑いながら答えた。


「無事に薬草を採ってきたよ。これで街の人たちも安心さ」


 エリシアはその言葉に安堵の表情を浮かべ、ガルドの隣に寄り添った。


「こういう日々が続くといいわね……穏やかで、平和な日常が」


「そうだな。俺はこれで十分だ」


 ガルドは穏やかな夜の空気を感じながら、エリシアと共に歩みを進めた。季節は陽竜の月の終わりを迎え、次の炎竜の月へと移ろうとしていた。

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