第23話:「新たな道」

 エイリスを見送った後、ガルドとエリシアは森を抜け、再び街へと戻る旅路に着いていた。エイリスが王都へ帰還したことで少し寂しさが残ったが、それでも二人は次なる日常へと向けて気持ちを切り替えつつあった。


「ガルド、エイリスがいなくなって寂しいけど……」


 エリシアがぽつりと呟くと、ガルドは少し微笑んで答えた。


「ああ、でも彼女もきっと王都で頑張るさ。それに、俺たちも次に進まなきゃならない」


 ガルドは歩みを進めながら、街へと戻った後のことを思い描いていた。これから再び、冒険者としての依頼に戻り、静かな日常を過ごすことになるだろう。


 森を抜け、見慣れた街の風景が見えてくる頃、ガルドの胸の中にはある種の安堵が広がっていた。ゼヴォルスとの戦いから一転、再び穏やかな冒険者としての日々が待っているはずだ。ガルドはCランクの冒険者として、これまでのように地道な依頼をこなしながら街の人々を守る役割を果たしていく覚悟を新たにしていた。


 街へ戻ると、ガルドとエリシアはギルドへ足を運び、再び冒険者としての生活に戻ることを報告した。


「ガルドさん!おかえりなさい!」


 受付のセリアが、ガルドたちの姿を見るなり明るく声をかけてきた。彼女もまた、この街での生活にすっかり慣れたようで、以前より自信に満ちた表情を浮かべていた。


「なんだか久しぶりだな、セリア。何か新しい依頼があれば教えてくれ」


 ガルドは気楽に笑いながらカウンターに近づき、セリアから依頼内容を受け取った。平和な依頼が続く日常が、彼の目の前に広がっている。


「そうだ、これでしばらくのんびりした依頼ばかりになるかもな」


 エリシアが少し冗談を交えるように言うと、ガルドは「それが俺にはちょうどいい」と軽く笑った。


「大きな戦いは終わったが、街の人々にとっては日々の小さな依頼こそが重要だ。俺は万年Cランクで、そんな依頼をこなすのが性に合ってるんだよ」


 ガルドはそう言いながら、いつものように地道な依頼に取り組む覚悟を新たにした。彼は英雄ではなく、Cランクの冒険者として、街に必要な力を提供し続けることが何よりも大切だと感じていた。


 その後、街に戻ったガルドとエリシアは、再び街の冒険者たちと再会し、日常を取り戻していった。エリシアは街の人々と話し、ガルドは次々と依頼をこなしながら、街を守るために奮闘していた。


「……それにしても、セリー、お前もだいぶ馴染んできたな」


 ガルドはふわふわと漂うセリーを見上げて、軽くからかった。セリー――かつてはゼヴォルスとして恐れられていた精霊も、今ではすっかりガルドたちに溶け込んでいた。


「ふん、私はただ付き合っているだけだ。それに、お前たちと行動していると、意外と悪くない気分になる」


 セリーはそう言いながら、どこか照れくさそうに目をそらした。


「まあ、これからも頼りにしてるぜ、セリー」


 ガルドはセリーに軽く手を振りながら、今後も彼との協力関係が続くことを確信していた。


 そして、その夜。


 ガルドとエリシアは、ギルド近くの酒場で久しぶりにゆったりとした時間を過ごしていた。二人の間には、これまでの戦いで築いた強い絆があった。


「……これからも、こんな日常が続けばいいわね」


 エリシアが静かに杯を傾けながら呟くと、ガルドもまた、同じ気持ちで頷いた。


「そうだな。俺はこれで十分だよ。Cランクの冒険者として、街を守り、日々の依頼をこなす。それが俺にとっての幸せさ」


 二人は穏やかに笑い合い、静かな夜の中でその瞬間を楽しんだ。


 だが、二人にはまだ、次なる冒険への予感が残っていた。静かな日常の中にも、新たな出来事が待っていることを感じながら、ガルドとエリシアは新たな未来に向けて準備を進めていた。

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