第22話:「決意の帰還」
森の奥深く、ガルドたちはセリーが感じ取った微かな異変を追いかけていた。だが、異変といってもそれは何か危険な兆候ではなく、精霊たちの微かなさざ波のようなものであった。
「……特に危険なものは感じないわね」
エリシアが精霊の気配を確認しながら言った。セリーも肩をすくめながら、「どうやら、ただの精霊の小さな反応だったようだ」と結論を下した。
「ふぅ、何もなさそうでよかったよ」
ガルドは一息つき、剣の柄を軽く叩きながら周囲を見回した。だが、森の中に特に危険な兆候はなかった。
その後、ガルドたちは無事に森を抜け、再び街へと戻る道を歩き始めた。だが、そんな中、エイリスの表情がどこか落ち着かない様子だった。彼女はずっとガルドたちと共に戦ってきたが、心の奥底で別の思いが渦巻いていた。
エイリスは、心の中で決断を迫られていた――王都へ戻るべきか、それともガルドたちと共に旅を続けるべきか。
「……ガルド、エリシア、ちょっといいかしら?」
エイリスは意を決して二人に声をかけた。ガルドとエリシアは少し驚きながらも、彼女の話を聞くために立ち止まった。
「どうしたんだ、エイリス?」
ガルドが少し心配そうに尋ねると、エイリスは深呼吸をしてから静かに口を開いた。
「私は……そろそろ王都に帰ろうと思っているの」
その言葉に、ガルドもエリシアも一瞬沈黙した。エイリスが王都に帰る決意を固めたことが伝わったからだ。
「そうか……王都に戻るんだな」
ガルドは優しい目でエイリスを見つめ、静かに頷いた。彼もまた、エイリスが自分の道を進むべきだということを理解していた。
「……ええ。私もガルドたちと一緒に戦って成長したけれど、私が戻るべき場所は王都なの。そこには私の使命があるし、私が果たさなければならない役割が待っている」
エイリスの声には、決意が込められていた。ガルドたちとの冒険を通じて多くのことを学んだ彼女だったが、彼女には自分自身の使命を果たすべき場所があるという自覚が強くなっていた。
「寂しくなるけど、エイリスが決めたことなら……応援するわ」
エリシアが優しく微笑みながらエイリスに声をかけた。彼女もまた、エイリスが自分の役割を果たすために前進することを理解していた。
「ありがとう、エリシア……ガルド……」
エイリスは少し切なそうに微笑みながらも、ガルドたちに感謝の言葉を口にした。彼女にとって、ガルドたちとの冒険は大切な思い出となり、同時に自分を成長させる貴重な経験となった。
「いつか、また一緒に冒険ができる時が来るかもしれないけど……今は、王都に戻って自分の道を歩みたいの」
エイリスはそう言いながら、決意を新たにした。
「それじゃ、またな……王都で元気でやれよ」
ガルドは軽く手を振りながらエイリスを見送った。彼もまた、寂しさは感じていたが、エイリスが自分の使命を果たすために進むべきだと分かっていた。
エイリスは最後にガルドの方を見つめながら、小さく呟いた。
「ガルド……本当にありがとう」
その言葉には、彼への深い感謝と、秘めた想いが込められていた。だが、彼女はそれを口にすることなく、そっと振り返り、王都への道を歩き出した。
彼女の背中が森の影に消えていくと、ガルドたちは静かに見送った。
「エイリス……彼女も強くなったわね」
エリシアが静かに呟き、ガルドは少し寂しげに頷いた。
「ああ、でもきっとまた会えるさ。エイリスはこれからも自分の道を歩んでいく。俺たちも、俺たちの旅を続けていくさ」
ガルドはそう言いながら、再び旅路へと向かう決意を固めた。
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