癖の強い子爵家に転生したので、癖強な最強を目指します!

Unlira

第1話

物心ついたときから僕は右目が見えなかった。

何かの病気なのか、はたまた怪我が理由なのかはわからない。

お父様やお母様に理由を聞いてもごめんね、ごめんねと謝るばかりで教えてくれない。

わかる事といえば瞼のところに何度もバッテンを縫い描いた黒い糸があるということ。

右目が縫われているから同年代のみんなは僕を不気味がって、仲良くしてくれないばかりか馬鹿にしたり、酷いときには暴力を振るってきた。

家族や執事、メイドのみんなは優しいけど、どこか胸に穴が空いたような虚しさがあった。

みんなには内緒にしてたけど、内心では何度も神様を恨んだし、みんなも同じ目に遭えば…なんて酷いことを願ってしまった。

だからだろうか?偶然、僕に飛んできた馬車輪の破片が当たったとき「罰が当たったんだ」なんて思った。

だけど、それと同時に…「これで苦しまなくていいんだ」なんて安心感を薄れていく意識の中で覚えた。

そうして僕は、長くて深い眠りについた。

…あぁでも、最期に自分の右目について知りたかったな。






…気づいたら何故か片目が開けられない件。

さっきからずっと努力してたんだけど、それでも一向に右目が開かん。

原因を探るべく、触ってみたらなんか糸のような細いのが瞼の上にあるっぽい?


「どこかに顔が映る場所は…お、ガラスあんじゃん」


キョロキョロと周りを見回りながら歩いていると、近くにガラス張りになっている店を発見した。

走って近づいてガラスに映る自分の姿を確認する。


「どれどれ…俺の右目はどうn……って、なんじゃこりゃ?」


ガラスに映った自分の姿は元の自分の姿とは全く異なっていた。

黒目黒髪は同じであるが身長は小学校高学年くらいまで縮んでおり、前髪は右目の方は頬の半分近くまで隠れるくらいに伸びていかにも「僕お金持ちですよ〜」と言いふらすかのようなところどころ金色の刺繍が施された服を着ている。


「気づかぬ間に目隠れになってるし…てか右目は………あぁ、そういうこと」


目隠れになっている前髪を掻揚げ《かきあげ》ると、目が見えない理由が判明した。

なんと、右目が縫い合わされていたのだ…それも、何重にもバツを描くように。

まぁ、そりゃ開くわけがないですな…てか何があったし。

う〜んう〜んとこうなっている原因を探っていると、俺はとある事を思い出した。

それは少し前に遡る…







「突然ですが、あなたは死んでしまいました!」


「…は?」


気がつくと俺は真っ白な空間に立ち、目の前に現れた少女「女神です!」に笑顔でそう言われた。

少女「女神ですよ!」…は背が低くく、世間的にはロリと言われるくらいの背丈しかない。

だが、それよりもこの少j「め!が!み!」…女神が言ったことに衝撃を覚えた。

…しれっと人の脳内に入り込まないで、プライベートゾーンだよここ。


「え?俺死んだの?いつ?」


「つい先ほどですねー。ちなみにですが死因は押し入り強盗犯による刺殺ですね」


「昨日の夕飯はカレーだった」みたいな軽いノリでとんでもない死因を言われた…

ショックを感じて地面にのの字を書いていたら、女神は「あ、そうでした!」と思い出したと言わんばかりの様子で手な叩いて鳴らした。


「刺殺により死んでしまった。そんな可哀想なあなたには転生のチャンスがあります!おめでとうございます!」


「どんどんぱふぱふぱちぱちー」と、自分で効果音をつけている女神に、俺は顔を上げて目をぱちくりさせるのだった。

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