雫 ー無能無力なヴァンパイアハンター物語ー
山親爺大将
第1話 無能なハンター
「えっと、大人しく投降してもらったり出来ないですかね?」
銀髪のショートボブ、茶色いオーバーオールを着ている女の子は目の前の怪異に向かって投降を薦めていた。
「何を言っているのだ貴様は?」
真っ赤な目に口には鋭い犬歯、誰もが知ってるその姿は典型的なヴァンパイアだ。
「知ってるんですからね! 血飲まなくても死なないじゃないですか」
そもそも不死者に死という概念は無い。
近いものは消滅だが、真の意味でヴァンパイアを消滅させる事の出来る手段はほとんど無い。
「血を飲むのは我々の本能に刻まれた嗜好なのだよ、コレを捨ててまで貴様らに降る理由がない」
「え、でも、今のヴァンパイア用の人工血液ってかなり美味しいらしいですよ」
「くだらぬな、貴様らは我々を手駒にしたいだけであろう」
「うーんまぁ、否定はしないですけど」
「誇り高き我らヴァンパイアを犬として飼いならそうとする傲慢さが気に入らぬ!」
「ハンター協会と協定結んでもらえれば、活動範囲は狭くなりますけど、快適に過ごせますよ」
「しつこい! 我々が貴様らに媚びる必要など無いのだ!」
「困ったなぁ、お互いの為にも敵対とかやめた方が良いですって」
「愚かなものよ、なぜ我がこうしてお主との会話に付き合ったか分からぬか」
「あ、身体が動かない」
「ハーッハッハッハ! お主は我の贄となるのだ! 悔しかろう!悔しかろう!」
そう言いながら、ヴァンパイアは女の子の首筋に噛み付く。
「……はぁ、またコレかぁ」
彼女は深いため息をついた。
「ヴァンパイアさん、異型輸血って知ってます? 違う血液型を輸血するとダメってやつなんですよ。
私の血液はそれに似たような現象を魔法的に起こしちゃうんですよね。
ヴァンパイアさんが吸うと」
「ウ、ウガァ!ガッ!アァァァァ」
「ほらね、だから敵対とかやめた方が良いって言ったんですよ。
あーぁ、はぁぁぁ」
大きなため息の後、彼女はスマホで連絡をいれた。
「あ、雫です。
ごめんなさい、またヴァンパイア消滅させちゃいました。
はい……はい……すいません。
あ、いや、でも、あ、なんでも無いです。
はい…すいません」
重い空気でスマホを切る。
「あーもう! 痛いし、血が減ってふらふらするし! また小言言われるし! なんで大人しく投降してくれないかなぁ! もう!」
天音 雫、ヴァンパイア捕獲実績0、ヴァンパイア消滅実績100以上。
ヴァンパイアハンター協会で最も無能で、最も強力な女の子だ。
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品はカクヨムコン参加作品です。
カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。
長編も書いているので良ければ見てください!
https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826
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よろしくお願いします。
雫 ー無能無力なヴァンパイアハンター物語ー 山親爺大将 @yamaoyajitaisho
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