第12話:まさかの協力者


___「ギルド」、ルカ。


「やあ嬢さん、おはよう。」

「あ、転移者さん。おはようございます。」


 大尉は昨夜借りたペンを、感謝の言葉と共に受付嬢に返す。


「早速だが、くだんの依頼を受領したい。」

「かしこまりました。こちらをご記入お願いいたします!」


 大尉はダンプポーチからボールペンを取り出し、紙の空欄に沿って埋めていく。




「__書き終わったぞ。」


 受付嬢が一つずつ確認していく。一通り目を通し終えると、ハンコのようなものを紙に押す。すると突然紙が燃え始め(それも緑色の炎だ)、燃えきったかと思うと、今度はひかりし、ペンダントのようなものを生み出した。


「い、今のはなんだよ。」

「魔法か?いちいち現実離れし過ぎだろ...」

「こちらは認証符、依頼中にリーダーにつけてもらう物です。」

「つけることで何かあるのか?」

「暴力沙汰を起こしても、お縄につくことがなくなります。皆さん、任務中は存分に暴れてくださって構いませんよ。」

「いいね。そういうのを聞きたかった。」

「それともう一つ、先日伝えておけばよかったのですが...」

「ん、なんだ?」


「コープスカンパニーがどうやら魔法使いを雇っているらしく...それもただの魔法使いではありません。Murderer Wizard殺し屋魔法使い。『夕焼けの殺人鬼』と呼ばれています。」


 

 『夕焼けの殺人鬼』...夕闇に紛れ、まるで花を摘むようにターゲットを排除し、秋風のように消え去る。

 彼の作る死体は、どれも燃える夕焼けのように美しく、儚く、残酷なもの。それが、彼を『夕焼け』たらしめる所以。『殺人鬼』である所以。



「魔法を使えない人が彼と互角に戦うのは、恐らく不可能でしょう。魔法使いを雇うことをお勧めします。」


「魔法使いか...だがそんな、都合良つごうよく協力してくれる魔法使いなんかいるのか?」

「1人だけいます。今日もここに来ていると思うのですが....」


 受付嬢が首を振り、その魔法使いとやらを探している。


 一瞬だった。瞬きをすると、大尉の後ろに銀髪の女が現れ、大尉の肩を叩いた。


「........お前の後ろだ、おっさん。」


 誰よりも早く、大尉はナイフを抜き、突如現れたその女にナイフを突き立てようとした。

 今度は目の前から、一瞬にして消え去った。大尉に続いて俺たちもナイフ、ハンドガンを抜き、辺りを警戒し始める。


「危ないだろ、こんなもの振り回して。」


 視界の外から手が伸び、俺のナイフを取られてしまう。


「てめ....!」

「あ、セシリアさん。やっぱりいたんですね。」

「セシリア?こいつが嬢さんの言っていた魔法使いか?」

「ええ、セシリア=プリムローズさん。うちのギルドの中でも、上位の魔法使いですよ。」

「そうだ、私は最強で天才だ。誰にも負けない。」

「自意識過剰なところが玉に瑕ですが。」


 その女はセシリアと名乗った。銀色の雪原のような白い髪、透き通るような白い肌。まるで冬のような女性だ。腰のベルトには長剣や短剣、トマホーク片手斧に、クロスボウまである。俺の知っている魔法使いは確か、近接武器を装備していなかったはずだが...


 彼女は俺にナイフを返し、ぱたぱたとローブをはたく。


「...初めまして、セシリアさん。俺はウェイド・クラーク。仲間からは大尉と呼ばれている。」

「セシリアでいい。」


2人は握手を交わす。


「それで....会って早々で悪いんだが」

「私にコープスカンパニーの壊滅を、協力してほしい、だろ?」


(聞いていたのか...一体どこから?)


「...まあ、そうだ。かなり強い魔法使いがいるというのでな。我々は魔法を使えないゆえ、是非あなたに協力していただきたい。どうだ?」

「奴らには色々と恩がある。奴らをボコボコにできるというのなら、乗らない手はない。....私にとっても、良い機会だ。」


「何があったのかは聞かないでおくよ。」

「報酬の割合はどうする?」

「強気なやつだ。二割でいい。あとはカンパニーの連中からたんまりと貰う。」

「わかった、ありがとう。嬢さん、セシリアと組むことにするよ。」

「かしこまりました。依頼の契約書は、こちらで書き換えておきますね。」


 一通ひととおりの挨拶を終えた後、俺たちはギルドから去り、コープスカンパニーの根城を偵察することとなった。



第12話:『まさかの協力者』終。

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