友達の話

キャベンディッシュ

友達の話

私の友達の話をします。こんな切り口で話し始めると本当は私、つまり今この文章を書いている私の体験談だったというオチを期待する人もいるかもしれませんので、改めて言わせていただきます。これは私の友達の話なのです。

小学校以来の友達なんて私にはそう多くはいませんが、彼はそんな数少ない友達のうちの一人でした。大学の夏休みで帰郷したときに彼と偶然近所のスーパーマーケットで会ったのでした。これからは彼をAとおきます。

以下からAの言ったことを文字に起こします。その過程で口語調の文章が出てきます。また、私もAも関西人ではないのですか、話の中には関西系の人が出てきます、関西弁のネイティブの人はそこのところをご了承いただいて、適宜脳内で補正をしていただけると幸いです。


(場所はスーパーの近くの喫茶店)

久しぶり。元気だったか?お前と別々の学校に行ってから親にスマホ買ってもらってさ、ラインとか交換すんのもできなくてごめんな。

話がある、なんていうとお前は情報商材とかネズミ講とかそういうの疑ってくんだろうな。小学校のときからお前、変な知識ばっかり覚えてたもんな。「情報だけで金持ちになんかなれるか」なんて言い合ってたけど今じゃ情報こそが貧民が金持ちになる手段になっちまった。

悪い、そういう話をしにきたんじゃないんだ。

小学校の裏に小さい山があったろ?冬になると学年でそこでスキーの練習をしてからスキー場で滑ったりしてよな、お前へたくそでいつもビリのクラス分けにされててさ

(大きな声で笑うA 私は運動が苦手なほうだった)

そこの山って、頂上に雨宿り用に小屋みたいなのがあってさ、鬼ごっこで捕まった人はそこによく入れられてたんだよな。

話変わるんだけど、近所に暴力団の奴いただろ?暴力団つっても半グレの親分みたいな感じで近所の人から金をゆすったり、親父狩りみたいなことしててさ、そいつらの集団?みたいなのがさ、そこの山の小屋のところでやばい取引を夜中やってるみたいな噂流れてたよな。夜中に公園いくとそのまま人身売買の商品にされるとか、取引に使う薬物の試しに使われるみたいなさ。

そのなかでもそいつらをまとめあげてたTってやつがいてさ、まとめるって言ってもそいつは暴力団の下っ端なんだけど半グレとかヤンキー相手にお山の大将やってたわけ。

そいつがある日、「俺らを嗅ぎ回ってやつがおる」「あそこの山に行くと視線を感じる」、とか言い出してさ。

そいつを見つけてボコってやろうってある日バットとかを持って山に行ったんだよ。

そういう噂が流れて次の日かな、朝そこら辺を俺がランニングしてたらTが話しかけてきたんだよ。

まずいなーと思ったね。そしたら「水くれんか」って。仕方ないから持ってた水入った水筒を手渡したら、そいつ一息で水全部飲んでさ

「おおきに」って笑って返したんだよね。

その日からそいつは半グレのボスみたいなのやめて大人しくなったって話。今じゃおばあちゃんとかの畑仕事とかをちょくちょく手伝うようにもなったって。

問題はそこからなんだけど、水をあげてから俺、顔を覚えられてたっぽくて時々話かけられるようになったんだよな。

話って言ってもTの身の上話ぐらいなんだけど、関西の出身だとか、最近の漫画は色恋か親愛かあやふやでようわからんとか。

それでTの地元だとこっくりさんみたいな遊びをするんだって。

でも普通のこっくりさんと違うのは、鳥居にあたる部分が違うところなんよ。

なんかこんなん

(画像①を添付します 近況ノートからご覧ください。万一このカクヨムという媒体で見れない場合は私のX(旧Twitter)のアカウントから連絡ください。写真を固定ツイート等に貼り付けておきます)

https://kakuyomu.jp/my/news/16818093085804975149

それとこっくりさんだと『はい』『いいえ』みたいな二択の質問したときように回答を示すところがあるじゃん、そこの上にこういう印を書くんだと。

こんな

https://kakuyomu.jp/my/news/16818093085805002548

(同じく画像②を添付します。これらの写真はAのかいたものを私が別の紙に再現したものですので、これらを見てもなんら問題はないと思われます)

で、それを聞いてちょっとやってみたいなって思ってさ。友達といっしょにやったわけ。

でもごく普通のこっくりさんだったな。ほんとにありふれたやつ。

それから、『おかえりください』ってやってからの帰り道にTとあってさ、そのこっくりさんみたいなのやったよーって言ったのよ。

そしたら、「こっくりさん?そんな名前やないで」って。「お前らなにおろしたんや」「点は打ったんか」って。

聞くと言うの忘れたらしいんだけど、その遊びの名前はこっくりさんじゃないんだって。名前はとどおかさん?っていうんだって。

(Aの口調が幼くなったような気がする おかしい Aはもう大学卒業を控えた身分なのに)

それと遊び終わったら、鳥居みたいなのの下の印の真ん中に点を縦に二つ打たないといけないんだって。

それをし忘れたからお前らは呪われるんだって。

でもさ、いまでも俺はぴんぴんしてんだよね、Tのやつガキだからってそうやって脅してビビる顔みて楽しんでたんだよきっと。ほんとふざけやがって。あいつが組長になったなんて信じらんないよ、前の組長を殺してなったらしいけどさ。

なんでその話をしたのかっていうとさ、このTwitter、今はXか?のアカウント見て欲しいだけど、これがとどおかって名前なんだよ。

この人がっていうかこの人のフォロワーが面白くてさ、その人におもしろおかしく設定を付け加えて変な創作作ってるんだよ。

それがTとまるかぶりしててさ、それが面白くって。この人とか人にその小説書かせて金払ってんだよ?おかしいよな。

お前もかいたらどうだ?

(Aのスマホには初期状態のなにも映っていないXのホーム画面があった 彼には何が見えているのだろう)


おかしいよな。このアカウントが始まりじゃないのに、俺たちがTと俺たちがあの山から、あの丘から、留まってたものをを解き放っちまったのに、俺が悪いんだよ、だから留丘さんっていうんだよ。きっと。


彼と別れてから、私は彼の残した落書きをよく見てみた。この四文字の記号のようなもの、真ん中に点を縦に二つ打つ。

すると極めて強引に変形させるとトドオカと変形できることに気づいた。

図③

https://kakuyomu.jp/my/news/16818093085805480225

そして、彼の言っていた丘に行くことにした。

夕日に照らされた山は血のように赤く映えている。太陽が向こうに。影が。輪郭が。

鳥居のように。


私は恐怖を感じながらも、山の上に登った。小屋というにもおぼつかないその建物には木のテーブルと丸太で構成されたただの立方体のように見える。

なんとなく視線を感じて上をみた。

そこには件の四つの記号が虫のように刻まれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

友達の話 キャベンディッシュ @cavven

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ