おまけ小話

第19話

魔王視点・プロローグ


いつも『壊せ、滅ぼせ』と囁くのは、破壊の女神だ。なぜかヤツは俺にずっとまとわりついて離れない。

世界を滅ぼして真っ平らな地平線から昇る朝日を美しいと思った。


『世界を滅ぼせば何でも願いを叶えてあげる』


消えろ、失せろと言いたかった。

だけど、口からこぼれ落ちたのは別の欲求だった。


もう一度会いたい。


普通のヤツなら屍を踏み潰すくらいどうでもいいと思っていた。


だがその人はそうはさせてくれない何かがあった。

はじめて美しいと思った。この感情は彼女を殺しても変わらなかった。


『生き返らせることはできないが、記憶を持ったまま生まれ変わらすことはできる』


「……」


『殺された記憶があるから、貴方のことは絶対愛さないでしょうね』


女神は満足そうに笑った。


「……心まではいらない。力ずくで妻にする」

『とても貴方らしいわ』


誰と重ねて俺を見ているのかわからないが、このしつこい女神につきまとわられる人生は変わらないらしい。

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前世で魔王に殺された聖女ですが、ごく平凡な一般人に生まれ変わっても魔王に捕まりました。なんか用ですか? 蟹井のん @kanii_non

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