第82話

北條流星が来た。


そして、その横には…


「充様、あの女性は…?」


「ああ、あれが俺の初恋の相手であり、俺を捨てた…胡蝶有希子さん…」


充は有希子をまっすぐと見据える。


有希子は北條流星の手を握っていた。



なぜ、胡蝶有希子さんがこのパーティーに来た!?

招待していないぞ…

なにか企んでいるのか?



北條流星は満面の笑みで充の前に来た。


「やあ、宝来君。

今日はお招きありがとう。光栄だよ」


そう言って、有希子の腰に手を回した。


「ああ、北條君、来てくれて有難う。

楽しんでくれ」


充を挑発しているのか、厭味ったらしい笑みを向け続けている。


「そちらの女性は…?」


わざとらしく聞く。


「ああ、紹介がまだだったね。

僕の今日のパートナーの胡蝶有希子さんだ。」


北條流星は有希子の肩に手を置いた。


「ふふ、充さん久し振りね」



赤いリップが艶やかに光った。

妖艶な色気に惑わされそうになる。


「ああ、随分と久し振りですね。

有希子さん」


目を鋭くしていうと、有希子は笑みを見せる。


「ふふ、充さんのその敵対する目、いつぶりかしら?」


ニコリと嬉しそうに笑う。


「ええ、最後に会った日じゃないでしょうか?」


メガネに触れた。


「そうね…ええ、さよならした日ね」


「今日はパーティーを楽しんで下さい」


「ええ、楽しませていただくわ…

充さん、隣りにいる女性は誰なの?」


有希子は結夏を指差す。


「…この女性は俺の世話役です」


「へー、充さんに世話役…

充さん、女性が苦手だったのに?」


「そうです。

俺の世話役として彼女を雇っています」


「ふふ…そう、あの充さんに世話役…

面白くないわね…」


有希子は小さな声で言った。


「ほら、有希子さん、挨拶も済んだし、あっちに行こう」


北條流星が有希子の手を引く。


「そうね、では、ご機嫌よう充さん」



上品に会釈すると、2人は消えた。

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表と裏の花 あいはらあいこ @aiharaaiko

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