第81話

「充くん、今日はお招きありがとう」


パーティースーツに身を包んだ鷹宮がソワソワしながら言った。


「鷹宮くん、来てくれて有難う」


「充、やけに盛大なパーティーね?」


「まあ、お父様主催だらかね」


「そう、楽しませていただきますわ。

行きましょう、シュエル」


そう言って、シュエルの腕に手を回すと、ビッフェが置かれたテーブルへと行った。



「これは婚約解消も近いな」


充はニヤリと笑う。


「シュエルとは何者なのですか?

普通の学生ではないですよね?」


「ああ、S級恋愛詐欺師だよ」


結夏は充の言葉に絶句する。


まさか、詐欺師を使うとは考えもしなかったからだ。


「え…では…」


「ああ、俺が指示している。

だから、明日にでもゲーム再開は近いな。

今日でシュエルは財前を料理するだろう」


「…充様、やりますね」


全く、本当に充様は突拍子なアイディアを考えられる…


結夏はクスリと笑った。


そんな戯れをしていると…



「充様、北條流星はまだ来ていないようです」


春樹は充の耳元でこっそりという。



「そうか…春樹、今日はお前もパーティーを楽しめ」


「し、しかし、充様になにかあっては…」


「何かあったら呼ぶ」


「はあ…」


春樹は困ったように顔を歪ませた。



「春樹様、今日はリラックスしてパーティーを楽しまれてはいかがですか?」


「真田さん…そうですね。

では、お言葉に甘えて、そうさせていただきます」


そう行って、バトラーから飲み物を受け取り、人混みのなかに消えた。


「お前もそんなスーツじゃなくてドレスを着ればよかったんじゃないか?」


「いえ、私はスーツの方が動きやすいので。

それに、着飾るのは好きな人の前だけにしたいのです」


「…そうなのか」


変わった女だな…

女とはこういうパーティーでこそ着飾るものじゃないのか?



結夏を見たら、すました顔で辺りを見渡していた。



「あ…」


小声で結夏は言う。

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