第14話 校舎トイレの怪談⑦

「立花くん、これ!」


 学校へ辿り着いた俺が下駄箱で靴を履き替えていると田所さんが現れた。

 頭を下げて両手で手紙を持ち、それを俺に差し出している。


「えっと…とりあえず顔を上げて欲しいかな。」


 他の生徒にめちゃくちゃ見られている。

 俺みたいな人見知りはこんなに注目される事には慣れていない。

 ただでさえ周りから浮いてるのにこれ以上目立つのはごめんだ。


「あ、ごめんね。これ、受け取って下さい。」


 顔を上げて再び差し出される手紙。

 俺はどこぞのアニメによく存在する鈍感系主人公ではない。

 同級生の女の子から手紙を渡された時点でラブレターを期待してしまう思春期真っ只中の男子である訳だが……やっぱり変だ。


 まず告白するのに今時ラブレターなんて古典的な手段を選ぶだろうか?

 まあ連絡先を交換してないという理由がある以上なくはないかなと思う事も出来る。

 だが、それでもわざわざこんな朝っぱらの人が多い玄関口でやるか普通?


 田所さんは大人しめの女子だ。

 目立つのを避けたいのは彼女も同じな筈。

 それに何より田所さんが俺を好きになる理由が思い当たらない。


(田所さんと話したのなんてこの前の事件が初めてだし、助けられたから好きになったなんてチョロい女子にも見えないんだよなぁ)


 まあ深く考える必要もない。

 どうせこの手紙の中に答えはあるのだから。


 俺は田所さんから手紙を受け取るとその場で開けようとしたが、それは阻止されてしまった。


「あっ、出来ればその手紙は一人の時に読んで貰いたいかな〜…なんて。」


「ああ、そうだね。わかった。じゃあ家で読ませて貰うよ。」


「うん。ありがとう。」


 田所さんはそれだけ言うと離れたところで待っていた山本さんの元に走り去って行った。



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 放課後、特に用事もない俺は颯爽と家に帰った。


 普段なら夜中の幽霊退治に備えてさっさと仮眠を取るところだが今日は田所さんの手紙が気になったので早速読んでみる事にする。




『立花くんへ


 昨日は私たちのせいで大変な目に合わせ ちゃってごめんなさい。

 この前の森丘峠、そして今回の件といい 立花くんが何か私たちには想像も出来ない モノと戦っていることが分かりました。

 本当は何かお手伝いしたいけど、私たちが いても邪魔になるだけだよね。

 だから詳しく話を聞きたかったけど、それ も辞めることにしました。

 ただ、もし私や深月ちゃんが力になれる 事があれば遠慮なく言って下さい。

 いつでも力を貸します。

 これからも友達として付き合ってくれる と嬉しいです。

 それじゃあまた明日、学校で。

              

               田所美玖』




「なるほどねぇ……ま、気持ちは素直に嬉しいかな。」



 あんな目にあったんだ。

 問いただして来るかと思ったが、知った上で聞かないでいてくれるのはありがたい。


(でも2人の力を借りる事なんてないだろうな)


 幽霊に対しては無力だし…と考えていたところで思いついた。

 あの2人の力を借りたら解決できるかも知れない難題を。



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 次の日の放課後、俺は早速2人の元へと足を運んだ。

 こういうのは早いうちがいい。

 というか今すぐやらないと間に合わない。


「田所さん、山本さん。早速で悪いんだけどちょっとだけ力を貸して欲しくて……その…授業のノート写させて貰えないかな?」


 2人は俺の言葉を聞いて一瞬呆けていたが、顔を見合わせ笑った。


「そんな事でいいならいつでも協力するよ。」


「なんなら勉強会でもやろーよ。美玖、頭良いから教えて貰った方が効率いいし。」


「いや、放課後は色々と用事が……」


 結局俺は断ることが出来ずに2人の勢いに翻弄されてしまった。


 (まあ、こんな日があってもいいか)


 これからも大変な事は沢山あるだろう。

 でもまあ何とかなるさ。

 幽霊だってこんなに楽しそうに生きている(?)のだから。




【あとがき】

 個人的には好きな作品でしたが伸びなかったので一旦ここで打ち切りとします。

 ここまで読んで下さった皆様、大変ありがとうございました。

 気が向いたら続きかリメイク版を書くかもしれませんのでその時はよろしくお願いします。

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幽霊なのに朝に出るな 杉ノ楓 @sou1234

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