君の笑顔が欲しい
@houzukimai
第1話
私を 殴ろうとする拳が途中で止まる。 私を切ろうとするカッターが途中で止まる。私を叩きつけようとした手も途中で止まる。そして、最後に「ごめんね… デェディア」と言いながら泣いてる女の子に惚れてるんだ。
ゆうみは、昔、私を親からプレゼントされた。 パッケージの箱をきれいに開いて、私をその優しい手で包み込んでくれた。 そして、デェディアっていう可愛い名前もつけてもらった。最初は、こんな可愛い名前は申し訳ないし、私より可愛いゆうみ方の方が似合ってるって思ってたけど、毎日のように暖かい目で愛おしそうに私と話してくれたおかげで、今では誇りに思う。人形で話せないから聞くだけだったけど。 それでも、話してくれるし何より、すべてが好きだった。
「ただいま」
そう言ってくれた声は、弱かった。切り傷、刺し傷、すり傷、などなど、その傷たち。ぶつけた後すぐの内出血のように、何かに隠れてわからないようになっていた。そして、そんなことが続いたある日、ゆうみは完全に壊れた。その時の音は静かだった。けど、私の耳には騒音だった。
カチカチカチ
カッターの刃を出す音は、私を傷つけようとする音。そういつしかなっていた。刺される、そう思い毎回、目をつぶりたくなる。でも、じっと見ていると途中で止まっていた。その大きな瞳からは、大きな水滴がボタボタしてて、そのスーッと通った鼻からは、水が垂れていた。そして、刃を振り上げた時、見えたんだ。腕に思いっきり掴まれた跡があるのを。それでやっと確信した。 だからあの昔の笑顔を、優しくってとっても可愛いゆうみを取り戻すためにも そばにいることにしたんだ 。朝早く、スクールバッグの中に入る。こうして、私はゆうみの学校の偵察に出る。やはり、今の状況だと情報が少ない。あっゆうみが来た。教科書や 筆箱、弁当箱の雨が降る。それを器用に…いやなんとかしてよける。チャックがしまった頃には、もう疲れ果ててしまっていた。そうしてスクールバッグの中に入って初めて気づいたが、この中は揺れがひどい。何も食べていないから吐けないが、いっそ吐いてしまった方が楽そうだった。そんなこんなで疲れ果ててしまい、いつか私は寝てしまった。
私は、何かの物音で起きた。
ジー
そう、この音。まだ続いている。そう思っていた時、少しずつスクールバッグの中が明るくなっていた。それと同時に、笑い声 話し声 椅子を引く音 ありとあらゆる騒音が聞こえてくる。……学校? 私には分からないが、そうなのだろう。そうして こちらを覗く顔があった。ゆうみ…いや
「何これwゆうみのやつ、まだこんなにボロ臭い 人形持ってんの。いつまで大事にしてんだよ」
カレンだ。確か、ゆうみと一番仲が良かったはず……でも…この目は…違う!
「ね-マジ終わってるわwそうだ、カレン、この人形さ、隠そうよ」
取り巻きが言ってる。嫌、逃げなきゃ。これじゃあゆうみの重荷になる。
「そうしようぜ」
その声を聞いてなぜか私は意識が遠のいてしまった。
君の笑顔が欲しい @houzukimai
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