母親の友人に恋愛相談に乗ってもらう

三葉 空

第1話 母の友人

 高校生と言えば、キラキラ輝くイメージ。


 けれども、現実リアル高校生の俺は、決してそんなことはない。


 友達が全くいない、ボッチではないし、陰キャでもない。


 かと言って、クラスの中心になるような陽キャでもない。


 中途半端な、一般生徒、凡人である。


 まあ、ある意味、それが1番の幸せなのかもしれないけど。


「ただいま」


 学校帰り、適当にブラついて夕方ころに帰宅すると、玄関先に家族のモノではない靴が置かれていた。


 黒くシュッとした革靴。


 俺はすぐに、あの女性ひとの顔が浮かんだ。


 少しドキドキしながら、廊下を歩く。


 リビングの方から、笑い声が聞こえて来た。


 ガチャリ、と。


「あら、武人たけと。おかえりなさい」


 母さんが言う。


「うん、ただいま」


 すぐに、俺は目線を横にスライドさせた。


「武人くん、お邪魔しています」


 きれいな女性ひとがいた。


 俺の母さんも、決してブスではないけど、やはり年齢相応。


 けれども、この女性ひとは、ちょっとレベルが違う。


希恵きえさん、どうも……」


「手洗いとうがいしてらっしゃい」


「分かっているよ」


 俺は言われた通りにしてから、再びリビングにやって来る。


「ちょうど夕飯時だし、希恵も一緒にって誘ったけど、良いわよね?」


「えっ? ああ、もちろん」


「ありがとう」


 ニコッと微笑む彼女から、サッと視線を逸らしてしまう。


 希恵さんは母さんの友人で、俺も小さいころから知っている。


 昔はもっと、普通に話せたはずなのだけど……


 中学の半ばあたりから、何だかこの人を意識するようになっていた。


 圧倒的な、女として。


節子せつこ、私も手伝おうか?」


「ううん、お客様なんだか、ゆっくりしていて」


「了解。じゃあ、武人くんとお話しようかな」


「えっ」


「どう、高校生活は?」


「いや、まあ……代わり映えしないですね」


「彼女とか、出来た?」


「いやいや、そんな……俺、モテないですから」


「え~、そうかなぁ? 私はけっこう、良いと思うけど」


 ドキッ。


「ねえ、武人くんは、どんな女子がタイプなの?」


「そうですね…………年上、とか?」


「先輩か~、じゃあ、ちょっとハードル高いね。部活とか委員会に入っていないと、なかなか接点ないだろうし」


「部活はやっていなくて……委員会は入っているけど、業務連絡くらいなので」


「そうか~、青春って、ほろ苦いよね」


「そうですね……ちなみに、どうすれば、年上の女性ひとに好かれますかね?」


「んっ? そうだねぇ~……」


 希恵さんは小さくうなる。


「とにかく、褒めてみるとか?」


「ああ、なるほど……希恵さんは、どう褒められると嬉しいですか?」


「私? 私は……若いですねって言われると、嬉しいかな」


「なるほど……でも、希恵さんは、若いですよ」


「まあ、この子ったら。早速、お上手なんだから」


「いや、本当に、お若いですよ」


「ありがとう」


 希恵さんは優しく微笑んでくれる。


 俺は照れくさくて目線を下げた。


 すると、スーツを盛り上げる爆乳に目が行く。


 会社の同僚、こんな女がいたら、仕事に集中できないだろ。


 ていうか、こんな美人なのに、何で独身?


 いや、今どき、珍しくないか。


 じゃあ、結婚はしないけど、彼氏はいるのかな?


 いるだろうな、きっと。


 ちくしょう、うらやましい。


 この美貌とカラダをめちゃくちゃにして……


「武人くん」


「は、はい?」


「そんな深刻に考えないで。困ったことがあれば、またいつでも、私が相談に乗ってあげるから」


「本当ですか?」


「そういえば、武人くんと連絡先、交換していたっけ?」


「あ、してないですね」


「じゃあ、せっかくだし、しようか」


「良いんですか?」


「もちろんよ」


 笑顔で言う希恵さんに対して、俺は胸がトキめく。


 一方で、下半身の方は、なんだかザワつく。


 いや、ムラつくの間違いかもしれない。


 お互いにスマホを取り出す。


「はい、どうぞ」


「ありがとうございます」


 連絡先に、河江かわえ希恵の名前が刻まれた。


 それだけで、俺はひどく興奮してしまう。


「嬉しいわ。こんな若い子と連絡先を交換しちゃって、おばさん若返っちゃうかも」


「もう、十分にお若いですよ」


「ホント、上手ね~」


 希恵さんはコロコロと笑う。


 きっと、気付いていないだろう、俺の気持ちに。


 俺はこの時、確信した。


 この圧倒的な女性オンナを、モノにしたい。


 あの流れるようにきれいな黒髪の匂いを嗅ぎながら、キスをしてみたい。


「私、ちょっとお料理の様子を見て来るね」


「あ、はい」


 希恵さんは微笑んだまま立ち上がり、母さんのいるキッチンへと向かう。


 その最中、お尻もまた、魅惑的すぎることに気が付く。


 おまけに高身長でスタイル抜群。


 全身、エロテロリスト。


 希恵さん、あなたの存在はもはや、犯罪級です。


 きっと、周りの男どもだって、放っておかないだろう。


 俺みたいな、大してイケメンでもない、しかも頼りない年下の男。


 まるで、望みはないのかもしれない。


 けど、やれるだけのことは、やってみよう。




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