黎明の決戦

「探したぞ、昼の王」


 夜が来ると同時に、彼女は全速力で逃げ出した。当然だ、不利状況で戦闘しても勝ち目はない。そのくらい、昼と夜の違いは大きい。


 しかし、なんとか夜のうちに昼の王を見つけ出す。


 同時に三日月状の血の刃が昼の王に襲い掛かる。彼女は火の玉を創り出し、痛み分け。


「いいのか? 俺はすぐ治るが、お前は治らない。ただ死なないだけ」


「いいじゃないか、身体が軽くなって。幸い、切断されるほどの傷はない」


「抉れてるぞ、背中」


「はっ。お前も貧血じゃないか」


 確かに、血の刃を出しすぎると貧血になってしまう。


「じゃあおあいこってところか。……つけようぜ、決着」


「朝が怖いからか?」


 図星を突かれる。昨夜逃げたのはそちらの方だというのに。


 ——一撃で決める。


 長期決戦は無理だ。朝を迎えてしまう。だから、確実に当たるタイミングで、最高の一撃をぶつける。


 昼の王が駆ける。それは、予想外にも直進。


 当たる。


 血の槍。血液を操作できる容量ギリギリまで並べる。針山のように。


「さあ、真っ向勝負と行こうか」


 余計なフェイントはかけてこない。彼女は、そういう目をしている。


 彼女が駆けるのを、跳ぶのを、ただ待ち構える。


 ——巨大な火球が、突撃してくる。




「本当に、酷い火傷だ」


「こっちこそ蜂の巣にされた」


 倒れ込んで、絶え絶えな息をする。


 どちらも、大抵の怪我ならなんともない種族であるが、今回はもはやその範疇を超えていた。


「……まだ後継者も決めていないのにな」


「こっちだって」


 静かに息をする。きっとこのまま弱っていく。日が、昇る。


 せっかく王の座まで上り詰めて、世界最強クラスにまでなったのに。


 まあこれも、悪くない。

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昼の王、夜の王 ナナシリア @nanasi20090127

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