黄昏の決戦

「初めまして、夜の王」


「こちらこそ、昼の王」


 先に声をかけたのは、こちら——しかし、ここから先は日が沈むリスクがある。戦えるのはほんの数十分程度。


 先制したのは、吸血鬼。


 そいつは典型的な吸血鬼よりも、攻撃が鈍い。


 私はひらりと躱す。無理な体勢ではない。いけるか――軽く一撃。


「昼の王。お前、吸血鬼みたいな戦い方をするんだな」


「夜の王。お前こそ、竜人みたいだ」


 強いフィジカルと、鈍い代わりに重い攻撃。代々竜人が得意としてきた戦い方。


「せっかく再生力が高いんだから、この方がお得だろ」


 夜の王はにやりと笑む。


 ——タイムリミットか。


 私は夜の王に背を向けて飛ぶ。


「おいおい、逃亡かよ」


「生きるためだ——」


 後ろは振り向かない。


 だが、それが仇となったのか――背を抉られる。


「忘れてるかもしれねえが、俺は吸血鬼だ」


 血の刃。厄介な能力だ。


 しかし、速度はこちらの方が上。気にせず逃げ出すのが正解だ。


 夜の帳が完全に降りてからでは、蹂躙されてしまう。


 ひとまず撒いた。だが、夜の王の存在を考えると、呑気に眠れない。居場所が気づかれていないということを考慮すると問題はなさそうだが、いつやってくるのやら。

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