昼の王

 泣く。


 どうしてお前らはそんなに弱い。強くなろうとしない。


 私も、昔は弱かった。身寄りもなく、ゴブリンにすら嬲られ、何度も死を覚悟し、だから強くなった。


 人間の村は、鬼によって襲われていた。


 雑魚が、必要以上に下の者から搾取するな。


「ありがとうございます、竜人様!」


 感謝するな。これはただの暇つぶし。いつか強くなって、その時また私の暇を潰してくれればいい。


 どうせ私は不老不死。せっかくなら悠久の退屈から逃げ出そう。




 翌日、様子を伺いに例の村に向かうと、そこからは人の気配が消え失せていた。


 まさか、懲りずに夜のうちに襲撃したのか。


 詳しく調べると、犯人は鬼ではなく吸血鬼のようだ。血が、抜かれている。しかも村人ほぼ全員。


 せっかく将来私を楽しませてくれると思っていたのに、吸血鬼ごときに。


 怒りはあるが、さして腹が立つわけでもない。ただ、吸血鬼は前から好きではない。当然だ、先代の昼の王の仇だから。


 これはもしかして、挑発だろうか。


 朝になった今も吸血鬼がここに残っているとは考えづらいが、念のため隅々まで調べる。


 気づけば夕が訪れる。太陽が地平線にかかっている。そろそろタイムリミットか。


 調査を終え、顔を上げたその先に——人影。

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