昼の王、夜の王

ナナシリア

夜の王

 ——日が落ちる。


 底知れぬ闇が、対峙する人間を飲み込む。俺に力をくれる。


 夜は俺のフィールド。夜の世界で俺に勝てる生物なんて、存在しない。断言できる。


 俺は人間に肉薄し、血を吸い取る。昼間に戦闘を挑まれると厄介なので、死体はそこらへんの山に隠す。流れ作業だ。


「……つまらないな」


 流れ作業だからこそ、刺激が足りない。


 昔はもっと面白かった。夜の世界にもちゃんと強いやつらがいて、先代の夜の王なんかはすごかった。……彼も、昼の王と相討ちになって命を落としたけれど。


 そこで俺は、思いつく。昼の王と刃を交えてみたい。


 しかし、それは叶わない。なにせ、二人が対等で居られる時間はない。昼に力を発揮する昼の王ドラゴニュートと、夜に力を発揮する夜の王ノスフェラトゥ


 だが、不老不死でも暇を持て余していては仕方ない。


 俺は、昼の王をおびき出すことにした。




 噂では、彼女は弱者に優しいらしい。だから、俺は人間の村を吸いつくすことにした。


 その村は、荒れ果てていた。被災? まるで、なにかに襲われた直後のような……。


 しかし、その割に、村人が不自然に多く生き残っている。


 俺には嬉しいことなので、気にする必要もない。問題は、昼の王がこのことに気づくかどうか……。


 このようなことをずっと続けていたら、いつか噂になるだろう。その時彼女と戦えれば、それでいい。


 その一心で、俺は村人全員の血を吸いつくし、死体はその場に放置した。




 目を覚ます。黄昏。


 俺は真っ先に例の村へ向かった。


 ——人影が、一つだけ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昼の王、夜の王 ナナシリア @nanasi20090127

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画