▶第3話のシナリオ

▶第3話のシナリオ



■場所(18年前・グローリア王国・深夜)


燃えている城をクルト(16)が遠くから見つめている。


兵士Aの声「クルト王子、ご無事でしたかっ⁉」


鎧を身に纏った者達や給仕服を着た者達が、クルトの元へやって来て跪く。満身創痍の兵士や給仕達。その中には、ミゼリア(18)の姿もある。


兵士A「我が国と同盟関係にあったエレクシア家が裏切りました」

兵士B「現在、我が軍はエレクシアの軍勢と交戦中です」

給仕A「ベラルド国王とアビトス王妃。ファルテス王子とシャディア姫君の安否は不明。現在、捜索中です」

兵士A「王子だけでもお逃げください」


乾いた音が聞こえ、給仕の一人が血を流して倒れこむ。


兵士A「もう、追っ手がここまで。王子、参りましょう」


兵士達は、盾でクルトを守りながらとある場所へ向かい歩き始める。



■場面転換(18年前・グローリア王国・港・深夜)


港へ続く道には、女性や子供や老人や兵士や給仕が血を流して倒れている。クルトとミゼリア。女性や子供や老人達が小舟に乗っている。小舟には、奇妙な模様が描かれた札が何十枚も貼られている。


兵士B「ガリアンの娘。王子を頼む」


ミゼリアは、頷く。


兵士A「では、王子。ここでお別れです」


兵士達は、クルトに微笑む。そして、剣を抜きクルトに背を向ける。ミゼリアは、小舟を操作。小舟は、動き出す。クルトは涙を堪え、兵士達の背中を見つめている。船に貼られた札は光を放ち、小舟は光に包まれていく。



■場面転換(18年前・海・深夜)


小舟は、海を漂っていた。クルトは、呆然と空を仰いでいる。


老人Aの声「クルト王子」


クルトは老人Aの声に反応して、振り返る。女性や子供や老人達が、クルトを見つめていた。クルトは、息をのむ。


老人A「王子、いつの日か必ず復讐を果たすと誓ってください」


老人Aは、クルトの手を握りしめ涙を流す。


クルト「……っ、痛い」


クルトの手から血が流れている。クルトは、老人Aの手を振り払う。


老人A「復讐すると誓え」


老人Aは、怒り狂いクルトの首を絞める。


女性「魔法も扱えないお前の為に私の旦那は死んだ。お前には私達の復讐を果たす道具として、これから生き続けてもらう」

老人B「お前は無能。だが、お前の体の中に流れるグランベルク家の血は本物だ。その血を利用して、奴らに復讐をしてやる」


女性や子供や老人達は、クルトを嘲笑う。


クルト「……助け……て……」

ミゼリアの声「王子っ⁉」



■場面転換(道・夕方)


ミゼリアに膝枕をされていたクルトは目を覚ます。


クルト「酷い顔だな」


ミゼリアの顔は、涙や鼻水でぐしゃぐしゃ。


ミゼリア「恥ずかしい。そんなにじろじろ見ないでください」


クルトは、体を起こす。


ミゼリア「起きて平気ですか?」

クルト「あぁ、大丈夫さ」


クルトは、空を見上げる。遠くの空には、煙が立ち上っている。クルトは立ち上がろうとする。が、よろめいてしまう。


ミゼリア「何処へ、行く気ですか。まさかっ⁉」


ミゼリアは、クルトの前に立ち塞がり険しい表情でクルトを見つめる。


クルト「誰かが、助けを求めているかもしれない。放ってはおけないよ」


真剣なまなざしのクルト。ミゼリアは、呆れてしまう。


ミゼリア「分かりました。私もお供します」



■場面転換(道・夕方)


クルトとミゼリアは、息をのむ。二人の目の前には、板金鎧を身に纏った者達や給仕服を着た者達が血を流して倒れている。馬車が横転しており、燃えている。クルトは、吐き気に襲われる。


ミゼリア「王子っ⁉」

クルト「ごめんね。生きている人がいるかもしれない。二手に分かれて探そうか」


ミゼリアは、頷く。二人は別れ、生存者を探す。


クルト「生きている者は、返事をしてくれ。声を出せないなら、何か合図をしてくれ」


クルトは、地面に倒れている板金鎧を身に纏った者達や給仕服を着た者達を見つめる。傷は背中に集中しており、うつ伏せで倒れている。何者かと戦った形跡はない。クルトは考え込む。


モルディアナの声「そこに、誰かいるのか?」


赤髪の天然パーマ。赤い瞳。幼さが残る顔。真っ赤な重装備の鎧を身に纏っているモルディアナが木に体を預けている。


クルト「大丈夫ですかっ⁉」


クルトはモルディアナに駆け寄っていく。


モルディアナ「……あ、あぁ。私は平気だ」


モルディアナの目には、生気がない。モルディアナは、側に倒れている板金鎧を身に纏った者に触れる。


モルディアナ「彼女に助けてもらったからな」


クルトは、横目で倒れている板金鎧を身に纏った者を見つめる。


モルディアナ「裏切り者から、私を庇って死んでしまった」


クルトは、怒りに身を震わせる。


モルディアナ「面白い奴だ。まるで、自分の身に起きたかのように怒るのだな」

クルト「向こうに仲間がいます。一緒に行きましょう」


クルトはモルディアナに手を差し出す。が、モルディアナは首を横に振る。


モルディアナ「私は、いい。ここで、死ぬ」

クルト「彼女の死を無駄にする気ですか?」

モルディアナ「貴様に何が分かる。放っておいてくれ。貴様には、関係ないだろう」

クルト「そうですね。貴女の言う通り、僕には関係ない。だから、貴女の意見を聞く義理もない」


モルディアナは、唖然とする。クルトは、モルディアナの腕を自分の首の後ろに回して立ち上がる。


モルディアナ「はっ、離せ。無礼者。私は、オべリア王国の姫だぞ」


モルディアナは顔を赤くして、じたばたと暴れだす。


クルト「なるほど。姫ですか」

モルディアナ「貴様っ、信じていないなっ⁉」

クルト「彼女は、別に貴女が姫だから庇ったわけじゃない」


モルディアナは、大粒の涙を流す。


モルディアナ「貴様に問う。私は、これからどうすればいい?」

クルト「何があっても生き続ける事です。罵られ辱めを受けても。僕が言えることは、これぐらいです」


クルトは、寂しげな表情を浮かべ空を見つめる。



(第3話 終了)

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復讐者たちの為の鎮魂歌(レクイエム) @meganecoking

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