消えない記憶
次の日の朝、僕は学校に登校した。昨日のことがまだ信じられずにいたが、学校に来るとその気持ちはすぐに打ち消された。廊下を歩いていると、突然壁から栞が飛び出してきた。
「ばぁ!!!!」
「うわぁ!」
思わず尻餅をついてしまった。
「お前、ふざけんなよ!いきなり飛び出してなんだよ!」
「いやぁ、挨拶に行こうとしたらちょうど見つけて、挨拶だけではつまらぬから、ちと驚かしてみようと思ったわけじゃ」
「だからって驚かしていい理由にならないだろ!」
周囲の視線に気づいて、僕の顔は一気に赤くなった。やってしまった。そういえば、周りの人たちにはこいつのことが見えないんだ。
周囲の困惑した視線やコソコソ話に僕はさらに赤面し、恥ずかしさに耐えきれずにすぐに立ち上がり、急いで教室へ向かった。
「何してんだよ、マジで…」
蓮は小声でつぶやきながら、肩を落として席に座った。
ーーキーンコーンカーンコーン♪ーーー
昼休み、僕は屋上で昼食をとることにした。あそこなら誰もいないはずだ。太陽の光が眩しい。僕はベンチに座って弁当を食べ始めたが、朝の恥ずかしさがまだ頭に残っている。すると、背後からひやりとした空気が感じられた。
「やっほー!うわぁ美味そうな弁当じゃな」
振り返ると、栞が僕の弁当を美味しそうに覗いていた。
「うわっ、またかよ…」と思い、僕は反射的に少し身を引いた。
「まてまて、今日は脅かそうと思ったわけじゃないんじゃ!本当じゃ!」
「…なら、なんだよ?」
冷たく返すと、栞は急に少ししおらしくなって下を向きながらこう言った。
「いや、あの…今朝のこと、ちょっと悪かったなぁって…その…驚かして悪かったと思っとるんじゃ」
あんなにふざけていた彼女が、反省している様子を見て僕は驚いた。
「いや、あれはお前のせいで…って、今さら謝られても…」
言いながらも、謝ってくる栞の姿に少し気が抜けた。
「そうかよ…まぁ、わかったよ。今回は許してやる」
僕はため息をつきながらそう返した。栞の顔が一気に明るくなった。
「本当か?!お主は器が大きいな!」
反省してるのか…?すると、急にガサガサし始めて、何かが入った袋を取り出した。
「で、これ!謝罪の印に駄菓子をやろう!」
僕の目の前に、袋を差し出してきた。中には懐かしい駄菓子の詰め合わせが入っていた。
「え、駄菓子?」
よく見ると、特に変わったところはなく、普通の駄菓子だ。
「どうした?受け取れよ、詫びの品じゃ」
栞がニコニコしながら言う。
「いや…これ、どこで手に入れたんだよ?お前、幽霊だろ?」
僕は当然の疑問を投げかけるが、栞は肩をすくめて答えた。
「ふふふ、それは秘密じゃ!」
栞はいたずらっぽい笑を浮かべる。
「いやいや、秘密って…幽霊がどうやって駄菓子を調達したんだよ!?」
僕が追及しようとするが、栞はもう興味を失ったかのように視線を僕に向けていた。
「そんなことより、お主が受け取るかどうかじゃろ?さあ、受け取れ!」
そう言って、強引に駄菓子を手渡してくる。
「いや、普通に怪しいだろ…」
僕は困惑しながらも、結局それ受け取ってしまった。
弁当を食べながら、僕はふと聞いてみた。
「で、お手伝いって何?何をすればいいんだ?」
「それは、妾の記憶を取り戻す手伝いをして欲しいんじゃ」
栞は少し寂しそうな顔をして、自分の過去について話し始めた。
「 妾は下校途中、事故に遭って死んだと思ったんじゃ。2年後に幽霊として目覚めた時には、すでにこの世に未練があったことさえ忘れておったんじゃ。でも、1つだけおぼろげに覚えてることがある。それは、文化祭で大切な人と一緒に作ったもの。お主にそれを探してほしいんじゃ」
栞の話に、僕は少し戸惑いながらも頷いた。
「でも、そんな昔のものがまだ残ってるなんて…本当に見つかるのか?」
「そこは心配ないはずじゃ。当時の物がいくつか残っておる。だから、文化祭で作った物もあるかもしれん。ただ、どの教室にあるかはわからんのじゃ。」
「じゃあ、ありそうな教室を探すのか。でも、旧校舎には鍵が掛かってるよな。どうやって入るんだ?」
「フッフッフッ、そこは安心するんじゃ!妾の力で鍵なんてすぐに開けられるんじゃ。ただし、夜じゃないと力が使えんがな…」
「ということは、夜の旧校舎に忍び込むってことか…」
僕はため息をついた。また夜の学校に忍び込むなんて、先生に見つかったらアウトだし、親には何て言えばいいんだよ…でも、もう引き返せないよな。
「今夜の2時に旧校舎前に合流しよう」
「うむ!待っておるからな」
僕と幽霊の追憶旅 小鳥遊 なの @83__Honey
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