第60話

「どうしてだよ?

なんか用があるのか?」


見習いパイロットの横で立っていたシドは、今のクラウドの発言には賛同しかねた。


「なるべくなら、さっさと先に進みてぇんだがな」


両ポケットに手を入れながら、クラウドに歩み寄った。と。


「…シド、頼む。

少しの間だけでいいんだ。エアポートに行ってくれ」


セフィロスが絡んでいる話みたいに、目は真剣だった。

そんなクラウドの様子に、周囲はそれ以上何も言えなくなってしまった。


「…―わかったよ、行ってやらぁ」


長い対峙の後。

深くため息をついたシドは、根負けしてようやく折れた。


「シド!

――ありがとう」

「おう」


クラウドは安堵して礼だけ言うと、シドの言葉を最後まで聞かずに、さっさと操縦室から出ていってしまった。


彼が操縦室からいなくなった後、少しの間メンバーたちは静かだった。


「…どうしたんだろうね、クラウド」


はじめに口を開いたのはナナキだった。


「…やっぱり、今日変だわ」

「……さあな」


ティファのつぶやきに、シドはこれ以上訊く気はないという顔をして操縦席の横に戻った。


「…まあ、リーダーの頼みだ。

見習い!

行き先をジュノンに変えるぜ!」

「うえっ!?

マジっスかぁ?」


シドが指揮を取ると、見習いは明らかに嫌そうな顔をしたが従った。


機体が180度方向転換する。


今は何もないはずのエアポートに向けて。



メンバーがそれぞれの位置に戻る中、クラウドが出ていったドアを見つめていたティファ。


……どうして不安に感じるんだろう。

この間、ゴールドソーサーに行ってからは特にそう感じる。


追いかけようか。


どうしようか…。

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恋と笑いと冒険と かねこかずき @kaneko507

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