第59話

「あれは…ジュノンで乗った船だ」


低い音の正体は、船の汽笛だった。

セフィロスを追いかけるため、神羅兵になりすまして乗りこんだ船なのだ。


(――ね、私、あれに乗れるかな?)


え…?


ふと、よぎる言葉。


(いつかオレが乗せてやるよ……期待しててくれ。)


(うわ~!

楽しみにしてるからね!一緒に乗ろうね、飛空挺。)


…ジュノン


船…


(約束、約束!)


潜り込んだ船の中で、エアリスと指切りをした。

その時エアリスが着ていた水兵の服。

笑顔。


ばららららっ


プロペラの音が加わって、クラウドは我に返った。


色々なことがありすぎて、埋もれてしまっていた記憶。それが一気に引き上げられた。


そうだ。

何で、この事を忘れていたんだ?!


クラウドは自分の額を二、三度叩いて叱りつけた。


「!」


叩くのがその程度で終わったのは、クラウドが何かに気がついたからだ。


さっと手摺りから離れ、船内に向かうドアへと走り出していた。




「おい、今のは切りすぎだぜ!」

「す、すいません」


操縦室では、シドが見習いパイロットを指導していた。


「こいつらだからいいが、普通なら端まで転がっちまう!」

「シド、いいって事はないよ…」


メンバーの中でナナキは耐えきれず、壁に打ちつけられていた。


ぷしゅう


「あれ、クラウド?」


壁からナナキが離れ、床にへたりこんでいると目の前の自動ドアから、息を切らしたクラウドが現れた。


「シド…、進路変更だ…!」


「はあ?」


彼の言葉に、その場にいたメンバーの視線が集まった。


「クラウド、どしたの?」

「ジュノン・エアポートに行ってくれ…!」


近づいてきたティファの質問を答えず、クラウドは続けた。

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