橋の下にいる

白川津 中々

◾️

橋の下にいた。


とにかく現実から逃げたく会社を無断欠勤し酒を買って酔っていたら雨。急いで駆け出し逃げ込んだ先がこの橋の下。せっかく買った酒は溢れてなくなり酔いも覚め、薄暗くジメジメした影の中で濡れていく世界をみていると大変惨めな気持ちとなる。この先どうしようか、どうしようもならない。俺はなんと馬鹿な真似をしてしまったのだろう。後悔と恐怖。路上で寝起きし空き缶を拾って日銭を稼ぐ未来を想像すると涙が出てくる。働きたくないし人と関わり合いたくもない。社会に交わる事がとにかく嫌で、生きる為になんとか耐えてきたが、限界だった。何もせず喋りもせず、酒によって夢の世界に浸りたい。そうして暮らしたい。それを叶えるための逃避だった。


それでも、全てを捨てる覚悟はなかった。それだけだった。それだけが俺を現実に繋ぎ止め、今も強く絡んで離さない。



……



スマートフォンを取り出し、会社に電話をする。大変恐れながら本日休養願いますと伝えるためだ。




不適合者だが生きていかねばならない。




スマートフォンを持って深呼吸。この雨が止んだら電話しよう。


カビと苔と汚れと落書きとゴミだらけの橋の下、立ち尽くして雨が上がるのを待つ。晴れる気配は、まるでない。

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