第6話 湖の戦い
高橋一行は湖へと徒歩で移動していた。
その間に高橋は現在の状況を聞いた。
魔王軍に反目したのはエルフ族だけではない。
ドワーフ族と翼人族、精霊族が立ち上がった。
それでも魔王軍の2割にも満たない。
圧倒的に劣勢ではある。ただし、現在、魔王軍は大部分を異世界攻略に向けているので、反目した勢力への攻撃は最低限に抑えられている。
反目した勢力は異世界の勢力に期待していた。
異世界の勢力は未知数。上手く使えば、魔王軍に圧倒が出来ると考えていた。
だが、それは単なる賭けでしかない。
反目した側にも異世界の事はまったく解っていない。下手をすれば、異世界の勢力に魔王軍共々、駆逐されかねないのだ。
時折、警戒中のゴブリンを撃退しつつ、高橋一行は湖に到着した。
「しかし・・・銃とはスゴイ武器だな」
ルーダはゴブリンを次々と射殺する高橋の自動小銃に驚いていた。
「まぁ、弓や投石に比べれば圧倒的だろうね」
「ドラゴンさえ殺せたのだ。凄い武器だと言える」
「あぁ・・・でもやっぱりドラゴンってのは強いのか?」
「うむ。本来、ドラゴンは魔法を巧みに操り、鱗一枚にも魔力を帯びさせ、鉄よりも固く、魔法にも耐性があるのだ。だが、お前の持っていた武器はそれさえも貫いて、一撃でドラゴンを葬った。凄い事だ。エルフ族ならば、百人掛かりでやっと倒せるかどうかの相手だからな」
高橋はなるほどと思った。確かにドラゴンの鱗はライフル弾を弾く程であったが、戦車の装甲ほどでは無かった。所詮は生物と言ったところだろう。携帯火器で対処可能ならば、戦車や装甲車が居れば、圧倒するだろう。
ただ、魔法は実際どうなのだろうかと思う。
たまたまドラゴンが油断していたところに一撃を放り込めたから勝てた。
だが、ドラゴンが本気を出して、魔法攻撃を仕掛けてきた時、果たして、対処が可能なのかどうか。
高橋はまだ、用心すべきだと考えていた。
そうしている内にも目的地である湖に到着した。
全滅した高橋の部隊の残骸が残さられている。
高橋は放置された仲間を何とか弔いたいとルーダに言う。
ルーダは少し頭を捻る。
どうもエルフには弔うとか埋葬するなどの儀式や知識が無いようだ。
「エルフは死んだらどうするんだ?」
高橋の問い掛けにルーダは少し考える。
「基本的に死ねば、死体は地に還るだけ。確かに臭いなどの問題から埋葬する事はあるけど、こんだけ数があって、特に生活場所から遠いのであれば、放置しておく。すると森の獣などが片付けてくれる」
「そういう感じか・・・悪いが、ニンゲンは彼らを埋葬して、弔ってやらないといけないんだ」
エルフからの理解は得られないが、埋葬する手伝いはして貰えた。
遺体から装備を回収しつつ、彼らを丁寧に埋葬する。
だがその時だった。湖から何かが姿を現す。
それは全長10メートルはあろうかと言う水龍であった。
長い蛇のようなそれは湖をかき回すように泳ぎ、その長い首を持ち上げて、高橋達を見下ろす。
「水龍です」
ルーダは弓を構える。だが、それに水龍は怯える様子も無い。
「勝ち目はあるのか?」
高橋は弓を構えるルーダに尋ねる。
「無理です。矢は奴らの鱗を貫けません」
「魔法は?」
「使ってはみますが、ドラゴン族相手に無駄でしょう」
「いきなり諦めの境地かよ」
「それぐらいにドラゴンは恐ろしい相手なのです」
ルーダの諦め顔を見ながら、高橋は銃に弾丸を装填する。
迷宮孤立 三八式物書機 @Mpochi
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