第5話 エルフの戦士

 大きな屋敷は戦士の教練場らしい。

 入口から入ると、板張りの大きな部屋がある。

 そこには何人かのエルフが木剣や長い棒で戦闘訓練をしていた。

 「おお、ルーダか。無事に戻って来たみたいだな」

 彼等を教えていた男エルフがルーダに気付いて、声を掛けて来た。

 「戦士長。偵察任務を終えてきました」

 「ふむ。彼は・・・何者だ?」

 「ニンゲンです。門の外から来ました」

 「ニンゲン・・・我々に近い肉体だが、顔はゴブリン・・・否、ドワーフとかに近い感がする」

 「それは散々、聞きました。自分は高橋と言います」

 「タカハシか・・・私は戦士を纏める役目のバシュだ。それでルーダ。何故、彼をこの村に入れた?」

 「タカハシは外の世界の戦士です。ドラゴンを一撃で仕留める武器を持っています」

 「ドラゴンを一撃で・・・にわかに信じ難いが」

 「この目で見ました。ただし、その武器はそれで役目を終えたらしいですが」

 「なるほど・・・他はどうなんだ?」

 バシュは高橋に詰め寄る。

 「ドラゴンを倒した武器は砲弾が湖の近くに放置されたままだ。奪われていなければ、まだ使える。俺自身ならば、この銃がある」

 高橋は自動小銃をバシュに見せる。

 「槍か?」

 バシュはまじまじと銃を見る。

 「あの的を撃って良いか?」

 高橋が弓矢の練習用に置かれた的の麦藁の束を指差す。

 「構わない」

 高橋は麦藁の束を狙う。そして、一発を撃った。

 20メートル先の麦藁は銃弾の威力で弾けるように破壊された。

 その光景を見たバシュは驚く。

 「なんだその武器は?」

 「銃だ。遠くの敵を撃てる」

 「凄いな・・・。外の世界の技術か・・・」

 バシュは改めて、銃を眺める。

 高橋が見る限り、エルフの武器は剣や槍、弓と言った古典的な武器が殆どである。銃どころか火薬を使ったような武器は存在しない。これで無反動砲で何とか倒せたぐらいに強力なドラゴンをどう倒すつもりなのかと思った。

 ルーダがその場に居た女エルフの内、2人に声を掛ける。

 「サージャとグラリ。私と共に来い」

 少し背丈の低い子どもっぽい女エルフと筋肉質な感じの女エルフがやって来た。

 「タカハシ、彼女等は私の部下です」

 「高橋です」

 エルフは老いる事もしない上に、誰も彼も美しかった。

 「タカハシ。私達はあなたと共に門の外に出て、あなたの仲間に助力を請うつもりだが、よろしいか?」

 「あぁ。だが、門には悪魔の軍団でいっぱいなのだろ?」

 「その通り。だから、突破せねばならない。少数で隠密で近付き、チャンスを狙って突破しようかと思っている」

 「なるほど。だとすれば、やはり強力な武器が必要だ。一度、湖の方へと向かい、無反動砲の砲弾などを回収したい」

 「解った。あなたの指示に従おう」

 「それで・・・この村は魔王に反目したって事になるのか?」

 「この村と言うか、エルフ族の総意だ。一部のエルフ族は悪魔と戦いを始めている。この村もいつ、悪魔に発見されて、戦いになるか解らない」

 「だとすれば、時間が無いという事か」

 「そういう事です。ですから、早速、出発したい」

 ルーダに急かされるように高橋一行は村を出た。

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迷宮孤立 三八式物書機 @Mpochi

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