第4話 エルフの村
ルーダは慣れた感じに森を駆け抜ける。
精強と言われた高橋でもその後を追うのは大変だった。
途中の休憩で聞けば、エルフは森の民と呼ばれ、森の中を誰よりも縦横無尽に動き回れるらしい。
そのせいか、怪物と遭遇する事も無く、目的地へと到着した。
「着いたぞ」
ルーダに言われたが高橋は周囲を見渡し、不思議な顔をする。
「どこに村がある?」
それを聞いたルーダが笑う。
「ははは。村は精霊術で隠してある」
ルーダはそう言うと何かを唱える。すると突如、森の中に鳥居が現れた。
「鳥居・・・門か・・・」
ルーダと高橋が鳥居を抜けると、再び、鳥居は森に消えた。
鳥居を抜けると長閑な村が現れる。
木と土壁で作られた家、窓は無く、障子のような紙が戸などに貼られ、明かり取りになっているようだった。どこか日本家屋を思わせる造りではあった。
「エルフは他種族からの襲撃を避ける為、こうして、精霊術で森の中に隠れている。悪魔でさえ、発見は困難だ」
「そんなところに俺を連れて来て大丈夫なのか?」
「ニンゲンって種族は知らないし、多分、お前は悪い奴じゃないだろう。それに仮にこの村の位置が解ったとして、精霊術を使えなければ、村に入る事は出来ない」
「そんなものか・・・」
ルーダはとある屋敷に連れて来た。そこは他の家よりも大きく、明らかに違っていた。
「村長の家だ」
「なるほど」
ルーダは門戸を叩く。すると中から一人の若い男が姿を現す。
「ルーダか・・・そこの・・・オーク?いや・・・ドワーフ?」
若い男は高橋を見て、困惑する。
「村長、そいつはニンゲンって種族らしく、門の外から来たらしい」
「ニンゲン・・・門の外にはこんな種族が居るのか・・・」
村長はマジマジと高橋を見た。
「じ、自分の名前は高橋です」
「タカハシ・・・すまないな。珍しくて・・・つい」
村長は慌てて、高橋から距離を取った。
「村長、ドラゴンに襲われたところを彼に助けられた。凄い武器を持っているようで、今後、我々の力になると思う。それに魔王が侵攻している門の外の種族だ。多分、気持ちは同じだと思う」
「なるほど・・・タカハシとやら・・・あなた方、ニンゲンも魔王と戦うことで一致しているのですか?」
村長に尋ねられて高橋は困惑する。
「い、いや・・・そもそも、我々はまだ、状況を把握していない。突然、門が出現して、そこから出て来た怪物に多くの市民が犠牲になった。我々は怪物を排除して、門を潜り、中の調査をする為に送り込まれただけで」
「そうか・・・まだ、魔王とかを把握したわけじゃないのか」
「我々の部隊は全滅した。この情報を門の外に伝えない限り、魔王とかと戦うとかの判断は出来ないかと思う」
「なるほど・・・だが、門には魔王軍が押し寄せている。我々はすでに魔王と反目し、いつ襲われるかわからない立場・・・簡単には門に近付けないだろう」
「そうか・・・どちらにしても門から危険な怪物が出てくるのであれば、自衛隊は徹底的に叩く。負けるとは考えにくい」
「頼もしいな。ドラゴンでさえか?」
「84ミリ無反動砲程度で腹が裂けるなら、戦車砲や野砲の余裕で殺せる」
「よくわからん武器だが、そんな強力な武器をお前たちは持っているのか?」
「こちらの怪物達の事はよくわからんが、自衛隊が門の外で防御陣地を築いている間は、どれだけ押し寄せたところで無駄だ」
「頼もしいな。是非、あなた方と連携して、魔王を討伐したい。そうすれば、この世界にも平穏が訪れる」
「あぁ・・・自分も戻りたいしな」
「わかった。ルーダ。お前はこの方と行動を共にして、まずは門の外を目指せ。そして、ニンゲンとの対話をするのだ」
「承知しました。それでは戦士を何人か連れて行きたいのですが」
「解った。お前の仲間を連れて行け」
村長との話が終わり、ルーダと高橋は別の家に向かう。
「村長って若いんだな」
高橋は何気にルーダに尋ねる。
「若い?ははは。冗談だろ。あれでも村では最高齢だぞ」
「最高齢・・・見た目は20代ぐらいに見えたけど」
「ふーん・・・タカハシはエルフを知らないのだな?」
「知らないが・・・」
「エルフは20代前半で肉体の成長が止まる。あとは老いないのだ」
「老いない?」
「あぁ・・・だから死ぬまで若々しい体で居られる」
「すげぇな」
「ニンゲンは老いるのか?」
「当然だ。爺さんになる」
「爺さんか・・・村長は70歳を超えている」
「へぇ・・・寿命はどれぐらいなんだ?」
「長くて100歳かな。大抵は60歳ぐらいで何かしらの病気とかで亡くなるよ」
「人間と変わらないな」
「そうか・・・お前は見た目通りなのか?」
「あぁ、27歳だ」
「そうか」
「ルーダはいくつなんだ?」
「秘密だ」
そんな会話をしていると少し大きめの家に到着する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます