第3話 エルフ
女性との会話は成立しない。
どうすべきかと高橋は思案するが、答えなど出るはずがない。
女性も言語が通じない事を考えた様子だ。
すると彼女は何かと唱え始めた。
高橋の頭の上に光が生まれた。
高橋は怯えたが、光はそのまま、高橋を包んだ。
その直後、女性の声が聞こえた。
「声は通じる?」
それは日本語だった。
「あぁ・・・解る」
高橋がそう答えると女性は安堵する。
「良かった。精霊術で言葉が通じるようにしたわ。オークの喋る言葉はこれまで気にした事は無かったから」
「オーク?オークとは何だ?」
「あなたのことよ・・・オークにしてはまともな顔立ちだけど」
「よく解らないが、俺は人間だ」
「ニンゲン?オークとは違うの?」
「さぁ・・・オークを見た事が無いからな」
「そう・・・ニンゲン。さっきは助けてくれてありがとう」
「人間ってのは自分の名前じゃない。名前は高橋だ」
「タカハシ・・・私はルーダ。エルフ族よ」
「エルフ・・・人間じゃないのか」
「人間か何か解らないけど、この森では高等な種族よ」
「高等な種族・・・それであのドラゴンに青い光を放っていたが、どんな武器を使ったんだ?」
「武器?違うわ。精霊術よ。光の精霊の力を使ったの」
「せいれいじゅつ・・・よく解らんが魔法みたいなものか」
「魔法じゃないわ。エルフは悪魔などに力を借りない」
「そ、そうか」
「それより、あなたの使った武器の方が凄いわ」
「あぁ、あれで終わりだけどね。あとはこいつだけだ」
高橋は銃を見せる。
「それは?」
「銃を知らないか・・・撃てば、遠くまで弾を飛ばせる」
「弾・・・弓矢みたいな感じ?」
「あれより遥かに威力がある」
「へぇ・・・」
ルーダは興味津々に高橋の銃を見た。
「それより、なんでドラゴンと戦っていたんだ?」
「魔王によって、門が開かれたの」
「門・・・あれは魔王がやった事なのか?」
「そうよ。この世界は魔王によって支配されたのだけど、魔王はそれでは飽き足らず、世界樹の力を利用して、異世界を侵略しようとしたの」
「なるほど・・・魔王ってどんな奴なの?」
「悪魔を統べる王よ。まぁ、自分達は神だとか名乗っているけどね」
「はぁ・・・悪魔ってのは?」
「悪魔ってのは他種族からの呼び名ね。彼等は自分達を使徒と呼んでるわ」
「へぇ・・・それは面白い。それで悪魔とエルフは敵対していると?」
「当然ね。まぁ、一応は戦争に負けて屈服した形だけど」
ルーダは閥の悪そうな顔をする。
「それで、ドラゴンと戦ったのは?」
「門が開かれて、エルフ族にも門の外へと侵攻しろと命令が来たのよ。いくら、服従したからといって、そんな未知の世界に放り込まれる事はゴメンだと思って、逃げ出したら、ドラゴンに追われたのよ」
「なるほど・・・それでは君はお尋ね者ってわけ?」
「そうなるわね」
「他にもそんな人達は居るの?」
「幾らでも居るわ。魔王の暴虐には殆どの種族が耐えかねているわ」
「じゃあ・・・魔王を倒したら、あの門も消えるし、多くの怪物が異世界に行くのも止められるわけだ」
「そうなるわね。それより、あなたはオークじゃない。ニンゲンだとすると・・・ひょっとして、異世界から来たの?」
「あぁ、そうだ。君達の放った怪物が自分らの世界で大きな被害を出したからね。調べる為に送り込まれたんだ」
「そう・・・あなた一人?」
「仲間は全滅したよ。正直、一度、門の外に逃げたいんだけどね」
「門の外ね・・・今は無理じゃない。悪魔もかなりの数が門の近くに配備されたようだから・・・。突破するのは難しいかも」
「悪魔はそんなに強いの」
「それこそ、あなたがさっき言った魔法を使うから」
「魔法ねぇ・・・どうしたもんか」
「私の村に来なさいよ。悪魔は異世界に夢中だから、多分、監視はされて無いと思うし・・・」
「ふむ・・・」
高橋は多少、悩んだが、これ以上、選択肢は無いと思い、ルーダについて行くことを承諾する。
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