第11話

『しょうがないわねぇ』


自分が今この場の責任者なのだ

私がこのレダ亭を力の限り守るのだ


目線を僅かに伏せたレダは、自慢の長い睫毛をふるわせ臆さず、堂々と背の高いスラリとした客の前に歩み寄る


グゥッと精神統一


静かに気合いを込めて

細い指先で優美にスカートを摘まみあげ、ひどくゆっくり上品に膝を折る


こうした高貴な人物に対して妥当なレベル、じっくり極めて丁寧に完璧なカーテシーのポーズを取り膝を折り、頭を下げた


貴族階級の人物に、平民が勝手に自分から名乗ったり彼等に声をかけてはいけない


これは歴然とした階級社会に住む大人達の不文律、決して犯すべからずな重大なしきたりである



「うむ、くるしゅうない、大儀タイギである」


高位側から下々へ許可が出た。


レダはスゥッと飛びきりの至高の笑顔を作り、天使の微笑みを頬に浮かべ口上を述べる


「お客様

私がこの宿屋『レダ亭』のマダム、レダと申します

以後お見知りおきを……」



言い終えたレダがスイッと顔を上げると。


目の前には驚きで目を限界いっぱいまで見開き、パァッと大きく丸くする騎士の顔が見えた


顔立ちが整い気品漂う様子が、如何にも純情そうだ


『いいわねぇーーー相手にとって不足なし

やってやろうじゃないの、若君様』


レダは更に艶然と、ここぞ攻撃場所とばかり満開の薔薇の花の如く微笑みかける



「気高き騎士様ユア ハイネス 

ようこそ我がレダ亭に、お越し下さいました」


「……!!」


「何かこの宿に、卑小な私めに高貴な貴方様は御用でしょうか?」




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とある女盗賊と美形騎士様 夏生めのう @natukimenou

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