第3話 再会2
状況を整理しよう。多央ちゃんこと白井多央の姉が今教室に入ってきた白井真央なのは多央ちゃんに初めて会った去年に知っていることだからそこはいい。そして俺はその白井真央に告白して振られた。これも事実だからそれもいい。だが、多央ちゃんが俺に耳打ちしたことはなんだ。
『私が好きな人のお兄ちゃんが、お姉ちゃんの好きな人』
……なぜ振られたんだ?????
頭が混乱している俺の事などつゆ知らず、白井は多央ちゃんと話をしていた。
「多央大丈夫?」
「うん、心配かけてごめんなさい、でも倫くんと倫くんのお兄ちゃんのおかげでもう大丈夫だよ」
「……」
「お姉ちゃん?」
「ううん、なんでもない、えっと学校から多央が泣いてるって連絡があって慌てて来たから状況があまり分からないんだけどどういうこと?」
真紀姉さんに先程までの状況を説明してもらい、3人が仲直りした事を聞いて白井は安堵した様子を見せた。晴也の母親も来るそうなので、ひとまず職員室に戻ることにした真紀姉さん。付き添っていた先生も別の仕事があるため教室を後にした。倫と晴也の3人で話したいと2人を連れて教室の外に出ていった白井。教室には俺と多央ちゃんの二人きりとなった。
三人が何の話をしているのか気になったかだそれ以上に気になることがあるので、多央ちゃんに問い詰めなければならない。
「多央ちゃん」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「さっきの話は本当なの?」
「さっきの話って?」
「えっと、多央ちゃんのお姉さんが俺のこと好きって話」
「そうだよ、お兄ちゃん、お姉ちゃんと同じ学校で同じクラスなんだよね、帰る度にお兄ちゃんの話してるんだよ、私はもう聞き飽きたよ」
「それって本当に俺の話?」
「お姉さんはいつも『多央ちゃん聞いて、今日陽介君がね――』ってうるさいの、私が倫くんのこと話すときちゃんと聞いてくれるから文句言えないけど、でもお姉ちゃんの話、わたしのより長いんだよ」
白井同じクラスで、名前が”ようすけ”のやつはこの俺色葉陽介一人しかいない。しかし、白井との接点は夏音の友達、つまり友達の友達としてであり、夏音を介して関わることは何度もあったが名前で呼ばれたことなどない……。
ってあれ?なぜ夏音は今日の告白の賭け、俺の成就するほうに賭けたんだ?
夏音は睦の彼氏でバカップルで有名だ。そのため、彼女に恋愛相談する生徒は結構居る。彼女のおかげで告白に成功した案件がいくつもあるのも確かなので。信頼と実績のある恋愛アドバイザーでもある。そんな彼女が成功する方に賭けたということは、この話マジかもしれない。
「じゃあなんで振られたんだよ!!」
と叫びたかった。好きな人に告白されて断る理由ってなんだ。分からない。でも一つだけ言えることがある。
「多央ちゃん」
「なにお兄ちゃん?」
「人の秘密事、特に好きな人の話は他人にするもんじゃないよ、特にその人が好きな人には」
「そうなの……、私後でお姉ちゃんに謝る」
「いやいやいや、言わなくていい、余計拗らせるだけだから、言わなくていいから」
「でも、お姉ちゃんと約束してるんだ、悪いことをしたらすぐに謝るって」
「今回は例外、お姉ちゃんにはこのことは内緒にするの、お兄ちゃんと約束できる?」
「……分かった、お兄ちゃんと約束する」
「よし、良い娘だ」
と頭をなでてあげた。多央ちゃんは嬉しそうな顔を向けていた。それを見た俺は心が温かくなり和んだ。
「そうね悪い妹ね」
背後から聞こえたその声で、温かった俺の心は一瞬にして凍り付いた。そう氷点下まで……。
後ろを振り返り、顔を上げるとそこには、顔を赤面させ、腕を組み仁王立ちをして俺たちを見降ろしている白井とその後ろでばつが悪そうな顔でこちらを見ている倫と晴也が居た。
「えっと……、いつから聞いてました?」
「私たちが教室を出た時から、多央が色葉くんと倫君が姉弟だと言った時に色葉くんの様子がいつもと違ってたからちょっと様子見させてもらっただけよ」
「お姉ちゃんごめんなさい」
「そうね、色葉君の言うとおり人の好きな人は他人に言っちゃだめよ、でもね、私が一番怒ってるのは、かわいい妹に隠蔽工作を持ちかけた色葉くんあなたよ」
「はい、すみませんでした」
すぐさま土下座をして、白井に謝罪の姿勢を見せた。好きな人に同じ日に振られて、説教されるって俺今日厄日なのかもしれない。
弟の前で情けない兄の姿を見させることになり俺は情けなくなった。
土下座をしているその時に、晴也の母親と真紀姉さんが教室に入ってきた。
「何この状況」
保護者がそろったところで、今回の件の説明を改めてしてもらい、晴也の母親である
「雪乃さんお仕事お忙しいのにごめんなさい」
「いいのよこれくらい、まだ締め切りは先だし、それにこれは陽介も倫君も悪くないんだから悪いのは全部うちの晴也なんだから」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「馨が事故に遭ってからもうすぐ一年が経つけどまだ目覚めないのよね」
「……うん、この1年、雪乃さんと沙紀さんにはいろいろと助かりました、改めてありがとうございます」
俺と倫の母親である色葉
「いいのよ礼なんて、親友の子供は私たちの子供なんだから困ったときはお互い様よ、だから真央ちゃんと多央ちゃんも困ったことがあったらいつでも言ってね」
「ん?ふたりは知り合いなの?」
「あら?知らなかったかしら?真央ちゃんと多央ちゃんのお母さんは私に沙紀に馨の親友よ」
「初耳だよ」
「雪乃さんお久しぶりです」
「多央ちゃんの入学式以来ね」
「おい、ちょっと待て」
「どうしたのよ」
「白井お前入学式行ってたのかよ、そういえばあの日学校休んでたな」
「なによ、妹の晴れ舞台よ当たり前でしょ、君は来てなかってけど」
「俺だって行きたかったよ」
弟の晴れ舞台、俺だって行きたかった。しかしその日は、アメリカで仕事をしている父親が倫のために帰国してきてくれた。その日は授業が通常通りあったため、俺は学校を休むわけにはいかなかったのでやむを得ず高校へと登校したのだった。
「てか真紀姉さんも知ってたのか?」
「知ってるも何も、私たち三人は会ったことあるのよ、10年以上前になるけど」
「「え!?」」
予期せぬ返答に俺と白井は同時に驚きの声を上げた。
「ちびっこたち三人がまだお腹に居なかった頃になるわね、私が中学に進学した頃ね」
「そうだったね、郁ちゃんが広島に引っ越す前だったかしら、その時は私以外とっくに結婚していて取り残された気分を味わってたわ」
「陽介あんたほんとに覚えてないわけ?私と初めて会った時の事」
「そん時俺まだ幼稚園生だろ、覚えてないよ」
「わたしも覚えてません、父の事もあまり覚えてないので」
「いやなこと思い出させちゃったかしらね、ごめんなさい」
「そんなことないです、でもこうやってみなさんと再会することができたのは良かったと思います、覚えてないですけど」
「家のアルバム漁れば写真出てくるかもお父さんが写真撮るの好きだからその日の写真もあると思うし今度実家で探してみるよ」
「実家と言えば、真紀あんた一人暮らしちゃんとできてるの?沙紀がいつも心配してるんだからね」
「……姉さん俺、今度家行くよ、心配だしというかもうダメそう」
「何その言い方失礼しちゃうわでもすごく助かる」
「渡辺先生ってそんなにずぼらなの?」
「……気になるなら俺の代わりに行ってみるか?すごいぞ」
頭脳明晰、運動神経抜群の美人でスタイルの良いのパラメーターはカンストしているのだが家事全般ができないのであるこの人は……。
沙紀さんのお願いで何度か姉さんのひとり暮らしで借りてるアパートに行ったことがあるが……。
思い出すのも酷なので今回はこのあたりで終わりにしよう。
弟が好きな娘のお姉さんは俺を振ったクラスメイトです MIL:RYU @MILRYU2780
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