第8話

『むかしむかしあるところに、春の国のお姫様がいました』

このフレーズから始まる、本当にあったお話。

その舞台の古城で、今日私たちは結婚式を挙げる。

桜色のドレスに、青いタキシード。

武器は持っていないけど、あのときと同じような服を着て、広間の扉を自分たちで開けた。

華やかな音楽が流れるわけでも、素敵な動画が流れるわけでもないけど、温かい拍手が耳に届いた。

「おめでとう!」

「綺麗だよー!」

口々に聞こえてくる、友達や家族からの言葉に、頬が緩むのがわかった。

「ここに住むんでしょ?」

友達同士で輪になって話していると、そういえば、と思い出したかのように聞かれた。

「うん。ここは大事な場所だから」

ここは、スカイが私たちに与えてくれた場所。

蒼は私が知っているものだと思っていたみたいだけど、前世を思い出したあの日、帰り際にスカイがおじいさんに変身したのを見て、おどろいて腰を抜かしてしまった。

そのおじいさんになったスカイが、ずっと私たちのためにこの場所を守ってくれていて、一緒に住むという話になったのだ。

だから中は思ったより全然綺麗で、当時のままを保っていた。

「そっか。香水、本当におめでとう」

「ありがとう」

司会進行もいないから、仲のいい人たちの同窓会みたいな雰囲気だけど、それはそれでなんだか心地よかった。

「ねぇ、蒼?」

「ん?」

「幸せだね」

あのとき、一度命を失ったあの日も十分幸せだったけど、今は比べ物にならないほど、すごくすごく幸せだ。

「そうだね」

隣に立つ彼に手を伸ばし、ぎゅっと抱きついた。

無性に、彼の温もりを感じたくなった。

「蒼、もう一度、私を迎えに来てくれてありがとう」

「こちらこそ、もう一度出会ってくれてありがとう」

私たちは目を合わせて笑い、キスをした。

この幸せが途切れることなく続きますようにと願いながら。

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運命を繋ぐ青い鳥 桜詩 @haruka132

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