第7話

「朔玖くん、おはよ」

「おー、香水。おはよう」

高校一年生になった入学式の日。

初めて顔を合わせたはずなのに、自然と私たちは名前を呼び、挨拶を交わした。

「変わらないね、朔玖くん」

どこか見覚えのある顔。髪型。そして、モテ具合。どこで出会ったのかはわからないのに、ただ懐かしくて、愛おしくて。

未来を一緒に歩くのは、一緒にどこまでも堕ちるのは、この人だと直感した。

「香水も。全然変わってなくて嬉しいよ」

運命の相手とは、一度別れることになるらしい。どこかでそう聞いたことがあった。

きっと、前世で一度、なにか事情があって別れたんだろう。なんとなく、そう思う。

それほど朔玖くんには、運命を感じていた。

「不思議だな。初めて会ったはずなのに、ずっと忘れられなかった気がする」

「私も。初めて会ったはずなのに、心の中にずっと朔玖くんがいた気がする」

ふと、笑ったときの朔玖くんの歯を見た。牙がないことに何故か物足りなさを覚えたけど、その違和感の理由はわからなかった。

「不思議な出会いに、乾杯」

ちょうど持っていたココアと、朔玖くんのサイダーをコツンとぶつけて、運命の人とのすでに幕を開けていた青春が前に進み始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたと堕ちられるのなら、どこまででも 桜詩 @haruka132

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ