母への疑惑?発達障害の可能性を考える
星咲 紗和(ほしざき さわ)
本編
わたしには、発達障害がある。そして、そのことがきっかけで、母親にも同じような傾向があるのではと疑うようになった。発達障害のことを知り、書籍やネットでいろいろな症状や事例を調べていくうちに、母親の行動や特徴が、いくつか思い当たるのだ。
まず、すぐにパニックを起こすことがある。たとえば、予定が変更されたり、段取りが崩れると、突然に慌てふためき、まるで見えない壁にぶつかったかのように混乱してしまう。その姿を何度も見てきた。母親は「こうするべきだ」という考えが強いのか、物事が計画通りにいかないと、焦りと苛立ちが入り混じった様子を見せる。
また、忘れっぽいところもある。何かを頼んでも、すぐに忘れてしまったり、話していた内容を覚えていないことが多い。わたしは、つい「なんでそんな簡単なことを忘れるの?」と苛立ちを覚えることがあるが、そのたびに、自分自身が同じように注意欠陥や記憶の混乱を経験してきたことを思い出し、母親の立場に思いを馳せる。おそらく、母もわたしと同じように、物事を維持するのが難しいのだろう。
そして、急ぐことが苦手で、何をしても基本的にマイペースだ。時間に追われているときでも、周囲のスピード感を無視して、自分のペースを崩さずに動くことが多い。まるで、周りの状況が見えていないかのように。そして、突然奇声を発することがある。大きな声で「ああ!」とか「もう!」と叫ぶ。わたしにとっては、これが一番怖い。突然のことで、理由がわからないし、その声を聞くたびに、わたしは萎縮してしまう。
普段はしっかりしているところもあり、家庭を守ってきた母親には感謝もしている。しかし、ふとした瞬間に、彼女がまるで違う世界に迷い込んでしまったかのような行動を取ることがある。そんな母を見ていると、わたしは不安になる。そして、父親がそんな母親に対して、怒鳴る場面にも何度も遭遇した。慌てる前にやれ!と怒鳴り、母も負けじと怒鳴り返す。その怒声の応酬は、まるで嵐の中に放り込まれたかのような恐怖をわたしに与え、何もできずに怯えることしかできない。
父もまた、透析を受けていて、身体の面での障害があり、心身ともに負担が大きい。母も糖尿病からくる神経症があり、日々の生活に多くの不安を抱えている。わたしは、母に対して、発達障害や精神的なケアを一度しっかりと受けてみることを提案した。今後のためにも、何か対策が取れるかもしれないと考えたからだ。母は、その提案に対して、少し理解を示してくれた。もしかすると、自分でも何かおかしいと感じていたのかもしれない。
しかし、父親は精神障害に対して、古い偏見を持っているようで、その提案には反発した。精神科に通うことや、薬を飲むことへの抵抗感が強いのだろう。そんな父親と母親が衝突するたびに、わたしはその間でどうすることもできず、ただ耐えるしかなかった。
わたしも、パニックになることがある。母のパニックがまるで感染するかのように、わたしの心にも伝わってくる。そして、自分がどうすることもできない無力感に押し潰されそうになる。わたし自身も発達障害を抱えている中で、家族の問題に直面するのはとても辛いことだ。
母は、いろいろな精神的な問題を抱えているのかもしれない。思い当たる節はたくさんある。年齢的にも、母が若い頃には精神障害の診断やケアがまだ十分でなかったことを考えると、今まで見過ごされてきた可能性もある。もし、わたしの疑いが勘違いであればそれが一番だが、もし何か医療的な支援を受けられることで、母の不安や混乱が少しでも軽減されるのであれば、わたしはそれを試す価値があると思う。
わたし自身も、自分の発達障害と向き合いながら、母の支えになりたい。もちろん、無理のない範囲でだ。家族の問題は、一人では抱えきれないことが多い。それでも、できることを少しずつやっていくしかないと思っている。医療や福祉の制度について調べ、少しでも母にとっていい方法がないかを探し続けるつもりだ。
これからも、母と共にこの問題に向き合いながら、少しずつ解決策を見つけていけたらと思う。母への疑惑と、わたし自身の不安は、簡単には消えないかもしれない。それでも、家族として、向き合っていくしかないのだから。
母への疑惑?発達障害の可能性を考える 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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