第3話

「うわぁ、相変わらずすげぇな。こんな量、マンガのワンシーンでしか見た事ねぇよ」



 颯斗はやとの机には、沢山のラブレターの山が広がっている。どの便箋にも、颯斗に対しての想いが沢山綴られていた。



「また、2年の後輩振ったんだって?あの子、この学校で一二を争う程の人気な子なんだぜ。もったいない」



 颯斗にちょっかいを出しているのは、幼馴染の鳴沢 翔なるさわ かけるだ。基本的に、先生達にしか詳しい病気は明かしていない為、翔はそんな颯斗が心配という名目で同じ中学に進学した。



「(まっ……颯斗も学内にファンクラブが出来る程の人気なんだけどな。ホント、イケメンの無駄遣いというかなんというか)」



 颯斗が中学に入学してから、恋愛の噂なんて聞いた事がない。正確に言えば、颯斗自身が恋愛に対して拒絶している節がある事は、翔も気づいていた。



「颯斗が、そうやって恋愛から逃げるのはやっぱり病気が理由か?」


 

 翔は真剣な面持ちで颯斗に尋ねる。その言葉に颯斗は、貰ったラブレターを整理しながら言葉を発する。



「……俺と付き合っても、他人を不幸にするだけなんだよ。だったら、最初から付き合うべきじゃない」


「颯斗の病気を分かった上で愛してくれる子も俺はいると思う。俺は、颯斗がどんな時も頑張ってきた事を知ってるから颯斗には、幸せになって欲しいよ」


 

 颯斗はふと物悲しげに微笑みながら、言葉を紡いだ。



「お前なら、付き合った彼女に期限付きの恋なんて経験させたいと思うか?愛すれば愛する程、お互い辛い思いをするくらいならきっかけなんて作らない方がいいんだよ」


「……颯斗…………」



 翔は、悲愴な表情でボソッと呟いた。そんな颯斗を恵が悲しそうに横目で見つめている事は誰一人気づかずに。

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